第22話 炎の誓い ― 第二十二話「影の要塞」

夜の街外れ。

 人の気配のない廃工場群を抜けた先に――巨大な黒い城壁のような構造物がそびえ立っていた。

 その異様な存在感に、誰もが息を呑む。


 「……ここが“影の要塞”か」

 悠真の声は低く、炎の揺らめきが瞳に宿る。


 黒木が前に出て説明する。

 「外壁一帯は影の結界で覆われている。普通に踏み込めば即座に飲み込まれるだろう」

 雷太が舌打ちをして肩を回した。

 「上等だ……全部ぶっ壊してやる」

 「無理だ」黒木は首を振る。

 「だが、光の力なら……」


 その視線が莉奈に向けられる。

 皆の視線を受け、莉奈は小さく息を吸った。

 「私に……やらせてください」



 莉奈は両手を胸の前で組み、静かに目を閉じる。

 次の瞬間、柔らかな光が彼女の全身を包み込んだ。

 光は揺らめきながら白い波紋となり、要塞を覆う黒い靄に触れていく。


 「……光が……闇を押し返してる」氷河が呟いた。

 やがて――暗黒の壁が裂け、一本の細い道が浮かび上がった。


 莉奈は振り向き、汗を滲ませながら笑った。

 「今のうちに……!」


 悠真は頷き、拳を握る。

 「突入する!」



 足を踏み入れた瞬間、闇の兵士たちが現れた。黒い鎧を纏い、赤い眼を光らせて迫る。


 「出たな、雑魚ども!」雷太が雄叫びを上げ、巨大なハンマーを振り下ろす。地面ごと兵士たちを吹き飛ばした。

 悠真は両腕を炎に包み、燃え盛る拳で敵を薙ぎ払う。

 「道を開けろ!」


 その隙に隼人と黒木が奥へと駆ける。

 「俺たちが澪を探す!」


 氷河は莉奈を守るように背後につき、剣を抜いた。

 「お前は結界を維持しろ。俺が絶対に守る」

 莉奈は嬉しそうに頷き、光を強める。

 「……ありがとう、氷河くん」

 「礼はいらん。……集中しろ」

 頬を赤くしながら、氷河は視線を逸らした。



 戦いの最中、不意に城内の空気が変わった。

 闇が一層濃くなり、兵士たちが一斉に消え去る。


 低く響く声が、全方位から響き渡った。

 「――ようこそ、我が影の檻へ」


 悠真の背筋が凍る。

 「……裏の支配者……!」


 天井から、無数の黒い影が垂れ下がる。その中心に、漆黒の仮面を纏った長身の男が姿を現した。

 「力を求める者よ。だが無駄だ……光以外、すべては我が影に呑まれる」


 莉奈の光がかすかに揺らいだ。

 氷河は彼女の肩を掴み、耳元で囁く。

 「怯えるな。お前の光だけは……奴に奪えない」


 莉奈は震えながらも、必死に頷いた。


 こうして――仲間たちはついに「裏の支配者」と対峙する。

 澪を救い出す戦いが、今始まろうとしていた。

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