第8話 佐治家への目録・船出そして驚愕!!


信長の命を受け明智光秀は、佐治為景に恭しく一巻の巻物を手渡した。


為景は緊張した面持ちでそれを受け取ると、ゆっくりと広げる。


​そこに書かれていたのは信長が提供する物資の目録だった。しかしその内容は、為景が想像していた幾ばくかの金銭とは、全く異なるものだった。



───目録───



​近江産コシヒカリ:5,000トン

​美濃産コシヒカリ:2,500トン


​飲料用ミネラルウォーター:30,000トン

(500mlペットボトル×6千万本)


​深井戸用ポンプセット:500式

​簡易浄水器:1000式

ウォシュレット付・公衆トイレ

1,000個


​読み進めるうちに、佐治為景の顔から血の気がみるみる引いていく。


佐治家は知多半島という地理的な制約から代々、水と米の確保に苦労してきた。


大規模な河川や水路がないため稲作はほとんどできず、米は貴重品だった。


​信長が提供した米と飲料水の量を計算すると、約5万人が1年間暮らせる量に匹敵する。


さらに特殊ペットボトルに入っているため、5年間の保存に堪えられる上に、井戸を掘り水を浄化するため、織田家機密とされていた、最新のポンプと浄水器まで提供すると書かれていたのだ。



​「こ、これは…!」



​為景は巻物を握りしめたまま、言葉を失った。


​その場にいた佐治家の家臣たちも、目録の内容を光秀から聞き、驚きのあまり膝から崩れ落ちる者まで出てしまう。


彼らの顔には、今までの苦労が走馬灯のように駆け巡っていた。



​「わ、我らが、この様な…」


​「まさか信長様が、我々の苦労を…」



​為景は信長の懐の深さと、その慈悲深さに心底から感銘を受けた。


信長は佐治家をただの軍事力として見ているのではなく、その生活、その民の苦しみにまで心を配っていたのだ。


​感極まって涙を流す為景

信長の前に再び土下座した。



​「信長様…ありがたき幸せ!我が佐治家は信長様のために、この命を捧げまする!」



​為景の言葉に続き、佐治家の家臣たちも声をあげて信長に土下座した。


彼らの心は、もはや信長への忠誠心で満たされていた。信長は言葉ではなく、行動で彼らの心を完全に掴んでしまったのだ。



◆□◆



​1ヶ月後、熱田湊で5隻のスループ船が完成した。その第1号艦、信長が命名した(黒龍丸)。

その名の通り漆黒に塗られた船体が、陽光を反射して不気味な光を放っている。


​進水式には信秀を筆頭に織田弾正忠家重臣たち、そして佐治為景と佐治水軍の主だった者たちが集まった。


皆が信長が造ったという奇妙な形の船を、半信半疑の眼差しで見つめていた。



​「さあ佐治殿。黒龍丸の速さ、その目で確かめてもらいましょうか。」



​信長の言葉に為景は緊張した面持ちで黒龍丸に乗り込んだ。帆が張られ、風をはらむと信長は為景に指示を出した。



​「舵は大きさが違うだけで同じ。この船の最大の利点!向かい風に進む方法を教えます。佐治家の皆も良く見ておく様に。」



​信長が操舵の指示を出すと、黒龍丸は風上に向かってジグザグに進み始めた。


それは、この時代の和船では考えられない動きである。為景は驚きに声を失い、ただただ信長の動きを凝視していた。


​信長は風の向きと帆の角度を微調整し、黒龍丸を加速させる。その速さは、まるで海面を滑るように軽快で、同行した和船をあっという間に置き去りにした。



佐治​為景は震える声で叫んだ。

​「な、なんと……!この速さは、一体……!」



佐治家のベテラン船乗り達も

​「ありゃーせん…風上へ進むなんて…夢でも見とるのかいな!」


​「ぎゃああ何ちゅう早さだ、信じられんがや!」


「こりゃあたまげたもんだわ!」



今までの船とは比べ物にならない。この速さなら、どんな敵からも逃げ切れるし、奇襲も容易になる。



​「この船こそ海の覇権を握る鍵となる。そして佐治水軍は、この船を操る者として、日ノ本1の存在となる!」



​信長の言葉に為景は心底から信長に心酔した。この若者は、ただの変わり者ではない。誰もが考えつかない、遥か先の未来を見据えているのだ。



『儂は織田信長様に生涯を捧げる。このお方こそ我ら佐治家を、いや米の収穫に苦しむ知多半島の貧しい民衆を、いやいや今川家の脅威に必死に抗う尾張の民達を救えるお方だ!!』



『殿!佐治家の殿への忠誠心はもはや、尾張1で御座います。』


『光秀、大変なのはこれからだぞ。陸と違いさえぎる物が無い海の上だ。今日の事も直ぐに広まる。


東の沖合いにいる漁船、あれは今川家の偵察船だろう。西の海岸沖は伊勢・志摩辺りだ。


秘密裏に造っている軍用特化のスプール黒龍丸10隻!建造を急がせろ!今日からお前が俺の代理で付きっきりで監督しろ!』


『はっ!1週間以内に竣工させます。』


『頼んだ、交代制にして賃金、飯、風呂を惜しみなく使え。特に風呂は今後、大衆浴場として領地内で広めていく。必要な物は全て神の倉庫から出すぞ。


ここからはスピード勝負だ!今川家の朝比奈は水軍を持っている、必ず近いうち一当てしてくる。』



織田家が佐治家を抱き込み、伊勢湾の制海権を今以上に磐石にする。

それを阻止する争いが勃発しそうな兆しが、見え隠れして来ました。


───

飲み終えたペットボトル

神力にて消滅、神の倉庫に自動収納されます。


作者得意のフィクションですから……

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る