3
放課後。号令を合図にして、教室から生徒たちがバラバラと散っていく。部室棟に向かう者も、図書室に向かう者も、一人で異様な駆け足になり飛び出す者もいた。
玲央は同級生たちとまとまって帰っていた。そんな中、ひとり、
「…」
「えーちゃん、今日ヤバくね?」
歩道をのろのろと歩きながら、学が様子を伺った。
「…栄人のばあちゃんの葬式、この前だったな。まだ一週間経ってない」
玲央が相槌を打つ。この
「…ごめんな、空気悪くして、でも、もうばあちゃんいないし、ばあちゃんが可愛がってたノラもどっか行っちゃったし、…」
「あー…、まあ、確かに野良猫減った気がするよな、なんとなくしんどいのも分かるけど…」
栄人は友達の手前で無理に笑おうとして、寂しさに溢れる涙をこらえた。学はどうしたらいいかもわからず、困り果てる。
玲央は穏やかに諭した。
「それくらい、大事な存在だったってことだろ」
「あ…」
栄人がハッとして静かになった。
「栄人の中でばあちゃんの思い出が残ってる間は、ばあちゃんはいなくならない。この世で苦しまなくなっただけだ」
「玲央…」
「早乙女、お前…」
友人二人は、真正面から玲央の言葉を受け止める。そして。
「お前、顔面はアイドルなのに言ってることが坊主のジジイすぎる」
「玲央ってよくお寺で手伝いしてるもんな、一応ちょっと落ち着いた気がするわ。ありがと」
「おい。いや、いいけど」
正直すぎる感想を述べた。
玲央は義理堅い家族がいる為、何かと鈴成寺で掃除や草むしりを手伝っていた。幼少時から交流のある住職とよく話すあまり、思考にも強く影響している。
もちろん、住職の孫の話も干渉している。死んでいる彼女が唯一話せる生きた人間は、玲央だけだ。
そこから少しだけ歩いて、それぞれの家の方面に向かって解散した。
「じゃーなー」
「おー」
学も栄人も明るい顔で帰っていく。夕焼けが玲央たちを明るく照らしていた。
「…」
そうして別れた直後、玲央はブロック塀に囲まれた細い路地裏に入り込む。すぐにスマホを取り出して、通話状態、のフリをする。
周りに見えない人たちと話すときの、玲央なりのカモフラージュだった。誰も居ない空間に向かって話しているようには見えづらくなる。
「…とのことです。いかがでしょう」
玲央は路地裏に居る老婆の幽霊に話しかけた。栄人の母方の祖母、
「おばーちゃん、だいじょぶ?泣かないでー」
「ええ、ほんに、ありがとうね…」
ひがんが半透明のハンカチを差し出す。ハツコはそれを受け取り、そっと目頭を拭った。老婆が祈るようにハンカチを握りしめると、その布はサラサラと消えていった。
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