狩人はファンタジーの世界へ~廃人ハンターは幻獣に魅入られた~
@5mooN-RaIN
第1話 RPG世界への足運び
ディスプレイ型の時代から長い年月、人気を博した狩猟ゲームのフルダイブ版”ワールドハンター・フロンティア”。
それがサービスを終了してからの年末は暇だ。
「はぁ~」
「何よ。サツキまだサービス終了を引きずっているの? どんだけあの狩りゲー好きだったのよ」
炬燵で寝ている俺を、従姉妹の文姉ちゃんが呆れたように見下ろす。その姉ちゃんから追加のみかんを受け取り、適当に言葉を返す。
「しょうがないだろ。初ログインした中学時代からほぼずっと遊んでいたんだから、一気に虚無感が来てるんだよ。サー終してからまだ1週間たって無いし」
「だからって、泊まりに来てからほぼ毎日ため息をしてる従兄弟を見てるこっちの身にもなって欲しいんだけど? 第一、サツキって他にも狩り系のゲーム持っていたでしょ。そっちに移ったりはしないの?」
(他の狩りゲーねぇ…)
確かに幾つか持っているし、和風の世界観が気に入って買った“鬼狩りの魂”なんかは割と楽しかったのを覚えている。ただ魔法的な異能力でモンスターを狩るのは手ごたえが少なくて達成感は少なかった。アレは本命を据えた上での口直し程度の距離感がちょうどいい作品だ。
皮をむかれたみかんを口に入れながら、青春を燃焼させた世界を懐かしむ。
「サツキって他のジャンルのゲームって持ってないの? RPGとか」
「持ってないわけじゃないけど、最後に買ったの中二の時くらいかな」
手持ちのソフトを思い返してみる。
狩りゲー9割。ローグライク系とRPG系で1割程度くらいか。狩り友たちに勧められたり、ショップで気分転換に見繕ったりして他のジャンルを遊んだりしたけど、狩っている記憶しかない。
「想像以上に偏っていたわ...」
「オフラインなら兎も角、MMOとかになると多分遊んで無いかもね」
「まあサツキの偏食は別にいいわ。個人の楽しみだし」
なんか遠い目で見られている気がするが、気にしない事にしよう。
「じゃあこれ持ってきたの意味なかったかな」
文姉ちゃんはそう言うと、炬燵の上にゲームソフトを置いた。それは一目で分かるくらいにファンタジーしているパッケージだった。しかも見覚えがある。
「これって文姉ちゃんが働いている会社のゲームだったけ?」
「そうそう。サービス開始から半年経ってるけど今も話題が絶えない、MMOゲームの代表格になった
置かれたゲームのタイトルを読んで、なんとなく思い出してきた。
”ガーデンオブユートピア”
開発者の趣味かは分からないが、ゲーム内のネーミングくらいしか悪口を聞かないやつだ。
「叔母さんにもう直ぐ新年なのに、気分どん底の人間がいると縁起が悪いからって相談されてたの。で、昨日叔母さんと出かけていた時にサツキにこれをあげれば良いんじゃないってなったのよ」
「その相談理由は流石に雑すぎる......」
「そんな雑な理由で相談された私の気持ちを汲んでね」
文姉ちゃんはそう言うと、炬燵から出て外出の準備を始めた。
「サツキの趣味に合うかは知らないけど、まあ久々に狩猟ゲーム以外を遊ぶのも良いんじゃない?
「まあ今は暇だし、あとでログインしてみるよ。ありがとうね」
「あ、因みにソフト代はゲームの
そう言い残して、文姉ちゃんは友人と遊ぶために出かけた。年末セールの戦争にも行くと言っていたから、あれは今晩遅いだろうな。
「さて、ほぼ強制だし早速初ログインでもしますか」
多分ログインしなかったら、かなり面倒な何かをさせられる気がする。
俺はVRマシンを立ち上げるために、自室のある2階へと向かう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます