第十三話 一難去って、また…

「うぎゃー!」

「これは分が悪い。」

教室に入ろうとした瞬間、私は何かに激突した。その二つの人影が、ものすごいスピードで階段を駆け下りていくのが見えた。いてて。何やってんだ、あの人たち。スカートをはたいて室内を見据えた私は、何かがおかしいことに気が付いた。増えている。嫌な予感が的中した。

「ちょっ、やばいってこれ!」

黄色と黒の縞模様が、群れを成して私めがけて飛び込んできた。これは確かに分が悪い。あいつもさすがに諦めるよ、これは。

「待って二人とも~。」

私の叫びが階段に反響して、大きなやまびことなって返ってきた。一階に着地する寸前、私は勢い余ってすっ転んだ。いててて。いったー。これはさすがに痛い。

「先輩!」

さっきと同じ体制で制服をはたいていると、岬ちゃんが駆け寄ってくるのが見えた。

「先輩、大丈夫ですか!」

「あー、ありがとう。危機一髪だったよ…」

「な、何があったんですか。」

「いや、それがね…」

のんびり説明している暇はなかった。聞き覚えのある羽音が私の耳を再び恐怖へと誘う。

「あ、やばいかも。」

「へ?」

「岬ちゃん、逃げて!」

「え?」

岬ちゃん、何を思ったか、ものすごい勢いで消火器の下へ走り出した。

「あ、ちが…」

いや、待てよ。それもありかも。

「先輩!これどうやって使うんですか!」

「うーんと、ちょっと説明難しいけど、うーん…まあいいや!」

衝撃になんとか耐えた自分の頑丈さに感謝しつつ、私は美咲ちゃんの下へ駆け寄った。

「え?」

「とりあえず、保健室行こう!」

「やっぱり先輩、どこか怪我してるんですか?」

「いや、違うけど…あっ、ほら、あれ!」

私が廊下の隅を指さすと、岬ちゃんの顔が分かりやすく青ざめていく。

「せ、先輩!行きましょう!」

「あ、うん。」

私の腕をがっちりつかんだ岬ちゃんは、ものすごいスピードで保健室の前までたどり着き、勢いよく扉を開けた。

「先生!水無月先輩が…」

そこに広がっていたのは、何とも形容しがたい光景だった。

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