第18話 付与魔法師、アビスワームと戦う

 40階層の《階層ボス》、アビスワームは巨大な芋虫のような魔物だった。


 全長は優に十メートルを超えるだろうか。

 アビスワームから放たれる威圧感に、思わず足がすくんでしまいそうになる。


 だが。


「みんな! 昨日の作戦通りにいくよ! ライラはヘイト役! その隙にユノは攻撃! セラフィナはサポートを!」


「うん!」「おう!」「はい!」


 僕の指示と共に、アビスワームとの戦いが本格的に始まり、みんなに付与魔法をかける。


「うおおおおお! 絶好調! アビスワーム! こっちを向きやがれえええええ!」


 ライラがアビスワームに向かって、大剣を横薙ぎに払う。

 しかし、それは囮。体をくねらせ突進してくるアビスワームを、ライラは真正面から大剣で難なく受け止めた。


「ユノ! 今だ! 【超強化】!」

「ありがと!」


 ユノが剣に炎を纏い、アビスワームを一閃する。


「OOOOOOOOO!」


 アビスワームの嘆きの声が、フロア全体に響き渡った。

 ユノ、会心の一撃だ。


 しかし、これでやられるほど、《階層ボス》は柔じゃなかった。


「……っ! アビスワームが地面に……っ!」


 アビスワームはユノの攻撃から逃れるように、地面へと潜っていく。

 一見、アビスワームの行動は逃げだ。このままじゃやられると思い、地中深くに逃げた。


 だけど、そうじゃないことを、僕たちは事前の作戦会議で知っている。


「みんな、防御体制を! そのための力なら、僕が付与するから……【堅固】!」


 どこから攻撃されてもいいように、僕はパーティー全体に防御力UPの付与魔法をかけた。

 次の瞬間。


「OOOOOOOOO!」


 アビスワームが咆哮を上げ──ユノの真下から現れた。

 下から突き上げられるような形で、宙を舞うユノ。


 だけど、問題ない。彼女は衝撃を和らげるために自分から飛翔したのだ。

 空中で体勢を整え、地面に着地するユノ。ダメージは若干あるが、すぐさまセラフィナが治癒をかける。


「お前の相手はオレだって、言ってんだろ?」


 ニヤリと笑って、ライラがアビスワームの気を引きつける。

 それにより、アビスワームはユノの追撃を諦め、ライラの方へ向かっていく。



 ──いけるっ!



 作戦通りだ。

 アビスワームは『暁の翼』の早さに翻弄され、自分の持ち味を発揮出来ない。


 話に聞いていた通り、手強い敵だ。

 だけど、今の『暁の翼』なら大丈夫! チームワークでじわりじわりとアビスワームを追い詰めていった。



 この調子なら──。



 そう思うが、さっきから胸騒ぎがする。


 全てが計算通り。アビスワームがやられるのも時間の問題だろう。


 だけど……なんだ、この胸騒ぎは?

 この程度でアビスワームがやられるのか?


 嫌な予感がしつつも、やはり戦いは僕たちの優勢。アビスワームの動きも明らかに鈍くなっていった。


「……っ! 今だ!」


 僕は手をかざし、付与魔法を展開する。


「【弱体化】……っ!」


 タイミングを見計らって、アビスワームの体に【弱体化】の付与魔法をかけた。


 作戦でも話した通り、強化に比べて、敵の動きを鈍らせる付与魔法は難易度が高い。

 一度でもかければ、次は警戒される。ゆえに一撃で仕留められるチャンスを待っていたのだ。


「ユノっ! 【トドメの一撃】を──【超超強化】!」

「任せて!」


 ユノが極大の火魔法を剣に纏い、アビスワームに向かっていく。


 しかし、アビスワームもタダではやられない。

 先ほどよりも鈍重な動きながらも、ユノの攻撃を受け止めようとするが──。


「おっと」


 ユノとアビスワームの間に、ライラが入る。


「言っただろ? オレと遊ぼうって。何回言っても、分からないヤツだな」


 ライラが邪魔でアビスワームは防御体勢を取れない。ジ・エンドだ。


「炎殺……剣竜斬!」


 その隙を見逃さず、ユノが剣を大上段に構える。

 高く飛び上がり──落下の勢いを利用して、アビスワームを両断した。


「やりましたか!?」


 セラフィナが声を上げる。

 警戒を崩さず粉塵が舞う前方に視線を凝らすと──そこには、アビスワームが地面で横たわっていた。


「倒した……のか?」


 震えた声でライラが言う。


「うん。間違いなく、生体反応がしないよ。僕たちの……勝ちだ」


 そう勝利宣言をすると、『暁の翼』のみんなはパッと表情を明るくした。


「やった……やったよ! わたしたち、本当にアビスワームを倒しちゃったよ!」

「リベンジ成功! 二十年ぶりの40階層攻略だったか!?」

「みなさん……素晴らしいです。私たちがアビスワームを……」


 歓喜に沸く『暁の翼』。ユノとライラは抱き合い、セラフィナに関しては涙ぐんでいる。


「ふう……」


 一息吐く。



 ──アビスワームは死んだ。



 しかし、なんでだ?

 さっきからする嫌な予感がなくならない。それどころか、どんどん酷くなっていく。


 なにか見落としていたか……?

 いや、間違いなくアビスワームは死んでいるし……。


 その時だった。


「……っ!? みんな、構えて!」

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