第2話 メイドさんと朝食

//SE(フローリングを歩く音)


「失礼いたします。荷物はこちらに置いてもよろしいでしょうか?」


(了承を得て)

「ありがとうございます。では、こちらに置かせていただきます」


//SE(荷物を置く音)


「失礼かとは思いますが、届いた封筒を見てらっしゃらない方と知ってもっと散らかったお部屋を想像しておりました。ですが、そもそも物自体があまり多くはありませんね。とても片付いているとは思います、が……」


//SE(近くにあった食卓を人差し指でなぞる)


「埃が溜まっておりますね。この様子だと……。随分と長い間、お掃除をされていないのではないでしょうか」


(聞き手の言い訳に呆れ混じりの溜息)

「確かに、お仕事がお忙しいこととは思います。ですが、部屋の乱れは生活の乱れ。このような部屋で生活をしていては、そのうち病気にかかったりしてお仕事に悪影響が出てしまいますよ?」


(すみません、と謝られる)

「謝る必要は何一つございません。ご主人様のように、世のため人のために働いてくださっている方をサポートするのが私の務めです。むしろ、来て早々にお仕事がなくなってしまわなくて安堵しております」


(聞き手に向き直って)

「ご主人様、そう言えば朝食の方はお食べになられましたか? 見たところ、朝にしては随分と片付いていらっしゃいますが」


(聞き手の返答に驚き目を見開く)

「……え、コーヒーを一杯? 今日は平日、これからお仕事ですよね? なりません。これから社会にご奉仕なさろうとしている方が朝食を抜くなど、万が一倒れでもしたら体調管理の責任を問われてしまいます。お時間の方は大丈夫ですか?」


(返答を聞いて安堵する)

「それは何よりです。すぐに朝食の用意をいたします。お台所をお借りしてもよろしいでしょうか?」


(お辞儀をして)

「ありがとうございます。では、冷蔵庫の中も改めさせていただきます」


//SE(冷蔵庫を開ける音)

//SE(冷蔵庫の中身を探る音)


「ふむ、なるほど……。卵に、ベーコン、ハム、納豆ですか」


//SE(冷蔵庫を閉めて)


「あとは、そちらに食パンが二切れですか。野菜などはありませんね。ですが、問題ありません。そちらにある紅茶も使いましょう。すぐに朝食の支度をいたします」


//SE(コンコンとパカッと卵を割る)

//SE(油を敷いたフライパンでベーコンと卵を焼く)

//SE(チンとトーストが焼ける音)

「……いい香りがしてきた、ですか? それは良かったです。もう少しで完成いたしますので、もう少々お待ちください」


//SE(トントン、サクという包丁を扱う音)

//SE(カップに紅茶を注ぐ)

(一連の流れをリズミカルに)


「完成いたしました。ベーコンエッグサンドです。コーヒーをお飲みになったと思いますが、やはりお飲み物はないとお口が寂しくなるでしょうから。もし不要でしたら、お残しになっても構いません」


(首を傾げながら)

「私も一緒に食べないのか、でございますか? いえ、私はメイドの身ですのでご主人様とご一緒するわけには参りません。後ほど、ご主人様がお出かけされた後に……」


(驚きで目を見開く)

「一緒に食べたい、ですか。かしこまりました。それが、ご主人様のお望みとあらばお供させていただきます」


//SE(テーブルに食器を置く)

//SE(椅子に腰かける)


「……はい、いただきます」


//SE(聞き手の咀嚼音)

「如何でしょうか、お味の方は? ……美味しい? それは良かったです。では、私も」


//SE(アリサの咀嚼音。小ぶりで可愛らしく)

「……確かに、我ながら美味しくできていますね。簡易ではありますが、このくらいの食事量でしたら適度に糖分や栄養を摂取できますからお仕事にも身が入るかと思います」


(少し嬉しそうに)

「ありがとう、ですか。いえ、とんでもございません。私のお役目を全うしているだけですから」


「嬉しそう? よく表情が硬くて何を考えているか分からないと言われるのですが……。確かに、今は嬉しいのだと思います。こうして、ご主人様に喜んでいただけていますから」


(主人公が時計を見て、慌てて食べる)

「あ、ご主人様……。そのようにいっぺんに食べてしまっては……!」


//SE(テーブルと椅子がガタッという音を立てる)


(感情は込め過ぎず、慌てた様子で)

「喉に詰まらせてしまわれたのですね……! だから止めましたのに……。ほら、紅茶をお飲みになってください。私が背中をさすらせていただきます」


//SE(背中をゆっくりとさする)


(安堵しながら)

「何ともなくて、良かったです。よろしいですか? 急ぐお気持ちはお察しいたしますが、急がば回れとも申します。例え仕事のためだとしても、自らの命を危険に晒すようなことはしないでください」


(ごめんなさいと聞き手が謝る)

「謝罪は不要ですが、私はもっと別のお言葉を頂戴したく思います」


(ありがとうと聞き手がお礼を言う)

「はい、どういたしまして。やはり、謝罪よりも感謝を述べていただく方がやりがいを感じられます。私の望みを聞いてくださり、誠にありがとうございます」


(そろそろ行かないと、と主人公が告げる)

「そうでしたね、お仕事のお時間でした。玄関までお見送りいたします」


//SE(玄関まで一緒に移動する)

//SE(主人公が靴を履き、ドアを開ける)


(深々とお辞儀をして)

「行ってらっしゃいませ。お帰りをお待ちしております」

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