第47話 悪役令嬢は真実を知る③

「アルベルト様」

「なに、ティナ?」

「その魔道具って本邸だけにつけていましたか?」



 婚約した当初はまだ、本邸で住んでいたから。



「もちろん、別邸にもつけているよ♪」

「あっ、はい……」



 なんか、過保護を超えてストーカーになっているわよね?


 すると、わなわな震えているアリアが口を開く。



「え、あ、その、アルベルト様、私は、そのようなことは決して……」

「はぁ、まだ言う?」



 満面な笑みを浮かべていたアルベルト様が、瞬く間に呆れ顔に変わる。



「本当、大変だったよ。報告書を持ってくる度に僕に代わってティナを貶めようとしている奴を殺そうとしていたんだから」

「えっ?」



 私を監視していた影の人達、そんな物騒なことをしようとしてたの!?


 だったら、助けて欲しかった……いや、そんなことをしたら大事になるわね。



「まぁ、その度に『僕自ら殺したいから』って言って大人しくしてもらったけど」



 あっ、そういうことだったのね。


 その時、側近達がアルベルトが持っていた魔道具と同じ魔道具を持ってきた。


 うわっ、1つ1つに偽造防止の魔法が付与されている上に記録した期間も書かれている。


 これ、我が家の本邸や別邸に設置されていたものよね。



「ティナ、僕を疑っているならここで好きなだけ確認していいよ」

「えっと……今は大丈夫です」

「本当に? 僕としてはここで僕への疑いを晴らしてもらっても全然構わないんだけど」

「はい。本当に大丈夫ですから」

「そう、分かったよ」



 凄く残念そうな顔をされていますが……いやいや、膨大な魔道具にあの音声が入っていると考えるだけでもう十分ですから!!


 それに、周囲の貴族や要人達から憐れみの目を向けられている中で確認するなんて絶対無理!



「それで、ここまでやってまだ『偽造している』なんてふざけたことを言う?」

「っ!!」



 そう言って、アリアに視線を向けるアルベルト様の目は明らかに据わっていた。


 怖い。この勇者、怖すぎる!


 すると、笑みを潜めたアルベルト様が鞘から大剣を引き抜く。



「ねぇ、分かる? ティナに会いに行こうとする度に、君の駒から『勇者様は聖女様のお世話をするべきです!』とか『毒婦のところに行っては、聖女様が悲しみます!』とか言われて阻まれ、挙句の果てに『勇者は魔王討伐が果たされるまで、聖女の傍にいること』なんてふざけた王命を下されて、ティナと会えなくなった僕の気持ちが」

「ア、アルベルト様?」



 静かに殺気を放つアルベルト様は、ゆっくりと切っ先をアリアに向ける。



「分かる? 君の駒のせいで愛しいティナと引き離され、君の駒が吹聴した噂のせいでティナが貶めてられていると分かっていながらも何も出来ず、君の駒と知りながらも父上や公爵に『ティナを守れ』と念押しした僕が、どういう気持ちで君と接していたか」

「アルベルト様……」



 いつも王子様然として誰にでも王子様スマイルを向けている彼が、身も毛もよだつような殺気を放ち、怒りに震えながら剣を向けるなんて誰が想像するだろうか。


 それも、聖女に対してなんて……小説の中だったら決してありえない展開。


 ここで私はようやく気づく。


 彼もまた、私と同じ、聖女の思惑に嵌められた人なのかもしれないと。


 そして、私と同じように、婚約者に会えないことに苦しんでいたのかもしれないと。



「で、でも! 勇者だから聖女を守るのは当然で……」

「それは、ディルクとルーランに任せれば済む話でしょ? 『勇者だから』って四六時中君の傍にいる必要なんてなかったんだよ」

「それは……」



 確かに、聖女のお守り役ならアルベルト様じゃなくても、ディルク様やルーラン様、神官達に任せれば良い。


 そうさせなかったのは、アリア自身が物語のハッピーエンドを望んだから。


 だから、私とアルベルト様を引き離し、私を貶め、アルベルト様との距離を縮めようとした。


 こう考えると……



「本当、身勝手な人ね」



 物語の愛されヒロインの自由奔放さに沸々と怒りが込み上げてきた時、口篭るアリアに冷酷な笑みを浮かべたアルベルト様が聖女の1を告発する。



「まぁ、ティナの母親を奴を好きになるなんて到底ありえないんだけど」

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