Saudade

衣ノ揚

1話

 宇宙人に連れられ乗せられた宇宙船は、思いのほかスッキリとしていて、物がなかった。持ち込んだ大量のダンボールが、部屋の隅を陣取っているくらいだ。


 私が”エナちゃん”と呼んでいるその少女は、到底宇宙人には見えなかった。空を写したような瞳。白い肌に、ふさふさのまつげ。薄い唇には、彼女の柔らかい雰囲気と合わない、パンチの強い赤色の口紅が塗られている。ちょうど肩に触れるくらいの金髪は、少しウェーブがかかっている。

 確かに、美しさという点に置いては地球人とは思えないかも知れない。誰もが、無意識のうちに彼女のことを目で追ってしまうだろう。


 エナちゃんは、壁に取り付けられたレバーに、そっと手をかける。

 私は、それに気がついて、小さくて丸い小窓に駆け寄った。外には、さっきまで私たちがいた、青い星が浮かんでいる。

 ガチャッと、エナちゃんがレバーを降ろした音が聞こえた。私は、依然として地球から目を離さない。


 地球が歪に膨張したかと思うと、その笑み割れた隙間から眩しい光が飛びだし、大量のヒビと共に爆砕した。

 疑っていたわけじゃないけど、まさか本当にできてしまうとは。

 宇宙船は地球からどんどん遠ざかっていく。

 私の生まれた青い星が、内側からダイナミックに爆発し、破片がスローモーションのようにゆっくりと飛び散って、バラバラになっていく。心の中で1音ずつ丁寧に、さよならを告げた。


 窓の外をボーッと眺めていると、エナちゃんが背後から声を掛けてきた。

「今日はもう寝たら? 疲れたでしょ」

「うん」

 私はまだ少し夢心地だった。事前に伝えられていて、私も納得していたとはいえ、目の前の光景が、にわかには信じられなかったのだ。

 私は窓から視線を彼女にずらす。そのお気楽で、腑抜けたニコニコ顔見ていると、自然と笑みがこぼれた。

「おやすみっ」

 彼女は上体を横に傾けて笑う。無邪気な少女の髪が、ふわりと揺れた。

「おやすみ」

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