幸せな春の蜻蛉返り

期限切れのマッキーペン

第1部

プロローグ:優しさに紛れた怪物の毒

 雨に紛れて花びらが舞っていた。

 春はまだ、泣き足りないようだった。

 少女はうんと背伸びをして、肺いっぱいに空気を吸い込む。

 ぽ、ぼ、ぽちゃん。心地よく落ちる水滴を横目に、まるで生きているみたいだと口先を尖らせる。


「──今日もみんなのために頑張るね」


 困ったような笑みを浮かべた少女は傘を手に取り、戸の外へと飛び出した。

「行ってきまーす!」


 雨だというのに、足取りは軽い。

 だがその一歩一歩は、確かに地面を踏み締めていた。

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