付与術士?違いますよ?~人材強化の異能力を持つ俺は最強ギルドを率いて異世界を無双する~

波 七海

第1話 追放されたんだが

「テメェは俺様を怒らせた! いい加減、足引っ張んのやめてくんねぇか?」


 安い宿屋1階の酒場兼食堂でいきなりそう言い放ったのは、騎士のドムであった。

 今や飛ぶ鳥を落とす勢いのC級パーティー〈全てを狩る者〉のリーダーにして最初の仕事依頼人の1人である。


「何を怒ってんだよ? オレが何か悪いことでもしたか?」


 全く心当たりのないことを言われてオレ――レギオン・アルビオンは少しばかり苛立たされる。

 それが表情に出ていたのか、他の仲間たちからも批難の声が上がり始めた。

 仲間とは言うが依頼人のようなものだが。


「そうよねぇ。全く役に立ってないしー。あたしもうフォローすんの疲れちゃった!」


 そう言ったのは魔術士のフォルである。

 艶やかな黒髪と共にその顔をドムの胸にあずけながら、まるで人を小馬鹿にしたような態度を取っている。


「もう……そんな顔できるほど活躍してる? レギオンさんも子供じゃないんだからさ。私たちももうB級パーティーになろうかって刻なんだよ?」


 光魔導士のフェアラートまで俺を責めるようなきつい口調でそう言った。

 お嬢様然とした金髪ロングの少女だが、普段の甘ったるい声とは大違いである。


 〈全てを狩る者〉を結成したのは片田舎のデスタル村と言う場所らしい。

 そこで幼馴染として育った仲間たちと組んだようで、この辺境伯領の領都ラルドを拠点に活動していた。


「まぁそんな訳だ。テメェはパーティーから追放決定! テメェとの縁もこれまで。サヨナラバイバーイ! 2度と俺様たちの仲間面すんじゃねぇぞ!! この〈全てを狩る者〉の面汚しがッ!!」


 嘲りを含んだ声で罵り、追放を宣告したドムだが初めこそイラッときたものの、何を言っているんだコイツは?程度にしか感じなかった。


 オレが?

 追放だって?

 何から何まで支えてやったオレが?

 と言うか正式なメンバーでもないんだが?


 ここで今まで沈黙を貫いていたトレイターが口を開いた。

 だがその目は何処か冷めた物を見るかのような感じで、とても味方をしてくれるとは思えない雰囲気を漂わせている。


「ま、可哀そうだが、庇い切れないな。あんたのギフトが何かは知らんが、恐らくは【付与術士】だろ? 戦いの時には確かに強化されている感じはした。だけどな? 言ってみりゃそれだけなんだよ。成長してるってのなら話は分かる。だが付与術士なのに一向に強化が増えないじゃないか。最初に〈全てを狩る者〉に加入した頃から強化の能力が上がったか? 上がってないだろ?」


 ギフトは10歳になると天啓として生けとし生ける者に与えられると言う特殊な能力のことだ。その力を行使して、磨かれ、そして極めるにつれて霊能力アウラと言うものに目覚める。それはとても特殊で唯一無二の異能力であり、恐らくだが同じ霊能力者アウラスが生まれることはないだろうと言われている。


 ちなみにギフトは秘匿するのが常識なので、オレは誰にも話したことはないし、誰からも聞いたこともない。

 それに特段、話す気もない。

 何故ならこいつらはただの依頼人だからだ。


 だがパーティーを結成した4人だけは別だったらしい。

 結束を強めるために皆が秘密を打ち明けたと言う話だ。


 オレは現在、ギルドやクラン、パーティーの育成・支援をする仕事を営んでいる。

 とは言え、始めたばかりなのでこいつらが最初の依頼人なのだが。

 元は魔王を倒した勇者パーティーの仲間の1人なのだが暇なのでやっている訳だ。

 日本へと帰還する方法を探しながら。


 当然、色々と教えて育成するのだから依頼人からはギフトについては聞くことにしている。

 ドムはCランクの【騎士ナイト】、フォルはD+ランクの【魔術士ソーサラー】、フェアラートはCランクの【光導士こうまどうし】、トレイターはC+ランク【神官騎士しんかんきし】である。

 たまたま、全員が職業系のギフトを授かったようだ。


 ちなみにオレはギフテッドと呼ばれる特殊な人間らしく、ギフトを複数授かった果報者なのだが、不本意にもこの世界に召喚されてしまった人間なので果たして喜んでい良いものか迷うところである。


 最初に授かったギフトは【軍神】【魔人】【調整士レギュレーター】【能力喰いチート・イーター】【カード術】の5つでいずれもS+ランク。

 どれも低ランクのギフトばかりで嫌になるが、これで魔王を倒せたんだから案外と捨てたもんじゃないのかも知れない。それに最初はSランクだったのがS+ランクに上がったしな。1段階だけだけど……。


 比較的、理路整然と追放理由を捕捉するトレイターだが、それだけはないと断言できる。決して【付与術士】ではなく、全てオレの能力によるものからくる影響なので全くの勘違いだ。


 その体内から溢れ出す漆黒のオーラが放出されてメンバー全員の強化に常時使用されているし、意図的な強化も行っているのだが、こいつらには理解できないらしい。

 そしてそれはオレが強くなればなるほど大きくなる。

 と言うか、既に強いんだけどな。

 魔王を倒す程度には。


 最初の仕事と言うことでちょっとばかり丁寧に接しすぎたのが間違いだったか?

 仲間だと思って接してきたが、裏目に出たと言うことなのかもな。


「上がってるさ。オレにはそれが分かるからな。それにオレは付与術以外にも色んなことで貢献してる。前衛もやるし魔法支援もやってる。そもそも雑用じゃないんだぜ? これ以上何をしろと言うんだ?」


 まぁ都合が良いので【付与術士】と言うことにしているんだが、そのせいで舐められたのかも知れない。

 すぐさま反論するが全員の冷めた視線は変わらずオレに突き刺さっている。

 これが仕事とは言え、貢献してきた仲間へ対する態度なのか。

 何度、オレがパーティーの危機を救ってきたと思っているのか?


「いや上がってないぜ! 俺様たちが強くなったからそう錯覚してるだけだ。ギフトってのは使用することで磨かれ更に強くなっていく物なんだよ。ってことはテメェは何も努力してこなかったってことだ。理解したか?」


 ドムはそう言いながら両脇に座っていたフォルとフェアラートを抱き寄せると、2人の胸をまさぐりながら下卑た笑みを浮かべてその唇を奪った。

 それをトレイターはまた始まったと言う表情で見ている。

 見せ付けているのだ。


 ガキが盛ってやがる。

 オレが転移した時から10年ほど経過しているせいで、冴えないおっさんに見えると言うこともあるんだろう。マウントを取っているつもりなんだろうが流石に腹が立ってきた。


「はぁ……努力をしていないだと? お前らこそ理解してんのか? お前らには確実に結成時よりも強力な強化を掛けている。ま、それだけじゃねーんだが……成長速度が段違いなこと自体おかしいと思わねーのか?」


 実際、こいつらは有り得ない速度でレベルが上昇している。

 ステータスなども同様だ。

 結果には必ず原因があるってことを理解していないようだ。

 この異常さに気付いていないのか、敢えて目を逸らしているのか?


「あ~ん? 負け惜しみもいい加減にしねぇとぶっ殺すぞ!! テメェがフォルをやらしい目で見てたのは分かってんだよ! 取られたからって妬んでんじゃねぇよ。このXXX野郎が!! ねぇねぇ今どんな気持ち? だははははははは!!」


 むしろガキのくせに飛んだ淫乱ビッチ女だ。

 だからと言って煽られれば誰だって腹が立つ。


「はッ……悔しがってるとでも思ったか? そんなビッチはオレの方からまるっとお断りだ」


 それを聞いたドムの表情が歪む。

 ビッチ扱いされたのがお気に召さなかったらしくフォルも醜い顔を晒している。


「テメェ……身のほどってモンを弁えてねぇみてぇだな。ぶっ殺してやる!」


 怒気を孕んだ声で威嚇しながら殴り掛かってくるが、身のほどを理解していなくて滑稽で哀れ過ぎる。

 このオレがレベルもステータスも高い【騎士ナイト】の力になど勝てるはずがない……訳がない。


 何度も何度も殴り掛かられるが、全てをいなして躱す。


「いやー。テメーはホントにアホだな。まーだ分かってねーのか」


 もうお仕事モードはいいだろう。

 猫を被るのは止めて本来の素の状態に戻って煽り返してやる。

 どうやらオレは追放されたらしいからな。


「ああ!? テメェ、付与術士だから自分を強化したのか? それか俺様を弱化させたか?」


 そう言い捨てて、ドムはオレに唾を吐きかけた。

 もちろん、そんなものは軽く躱して見せる。


「ヤダ、ホントにキモ……何やってんのよドム!」

「死ねばいいのに……」

「強化やら成長速度が速いやら……。くくく……勘違いからくる自意識過剰ってのは碌なものじゃないねぇ」


 失敗した。オレの教育方針が間違ってたってヤツだ。

 自分が勝手に強くなったと思い込んでいるようだが、これは理解さわからせてやらねーとな。


 こいつらには後で地獄を見せてやる。


 後でプギャーってな感じでざまぁwwwwwwって言ってやるか。



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お読み頂きありがとうございます!

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