残党編
第16話 疑問抱える一人
吉祥寺、それは終点である。そしてGATHER本部内の宿舎棟の自室にて、ここ最近あったことを考える。
いま思えば五月上旬からことは始まったのだと。銃が届き、ーー料理屋襲撃、リツの過去、他殺の概念による他者との食い違い、他殺の申し子、五月雨さんの正体、不思議なことが多すぎる。
そもそも何で銃が届いたんだ?あんな異質なものだ、必ず怪しい。
鉄筋コンクリートに覆い尽くされた殺風景な視界、それが僕を集中させた。
ーー料理屋、そういえばあの系統の料理屋がなぜか別の料理屋に変わっていたり潰れていた。短期間で変わるとはとても考えにくい。
辞書を取り出す。ーーを調べる。だがその記載は存在しなかった。
リツの過去がどんなものだったのか知らないが必ずトラウマになってしまうようなものだろう。今のリツの状況は不幸中の幸いだろうが最悪なのには変わりない。
幸せでいて欲しい。でもなぜ僕がこんな気持ちになるんだ?
よく分からない。なぜなら友達自体もそんなにつくってこなかったからだ。そもそも孤児として生きてきた僕はなにかが足りないのかもしれない。
放火魔に遭遇したときも警察と食い違った。あの出来事はとても不思議だった。話が通じなかった。まるでこの世界が他殺を認知できるかできないかで別れているようだ。
赤沢と金崎は知ってるのか?いや、知らないでいて欲しいな。こんな争いに巻き込みたくない。でも最近は思う、他殺を亡くすべきか生かすべきか。
白亜の情報、正しいのかは分からないが『他殺の申し子』という言葉、どうしてこんな呼ばれ方をしているんだ?自分はそんな殺人鬼でもないというのに。
リツも『詐欺の申し子』という呼ばれ方していた。嘘をつくのが下手らしいしなぜ?
物音など響かない、虚無過ぎる空間は僕の頭を狂わす。
五月雨さん、会ったこともないからどんな人なのか全然分からないけど雨を降らすことができるという、この世界でも異質な性質を持っている。
しかもそれは誰もが努力すれば習得できるとされるファンタジー上の魔法とかではなく先天的なものだとか。不思議なものだなこの世界は。
自分にもそんな力があればいいのに、なんて思わない。なぜか今は普遍的で誰もが持っていて、日々の中で常にある『普通に』を欲している。
ドアが鳴る。普遍的な回数ノックされる。
颯田「リツ?」
鷺島「颯田くん、いまいい?」
こくりと頷く。それを見て自分とは違う体温が近づいてくるのが伝わってくる。
鷺島「次の作戦の概要説明があるから会議室に来てね、十五分後に始まるの」
そう言って、リツはおもむろにメジャーを取り出す。
颯田「な、なにする気なの?」
鷺島「ルータに頼まれてぇ、スーツをつくるから採寸してこいって」
ルータさん......何をしているんだ?
なぜ、ルータがリツにこんなことをさせるのかとケントは思いつつ、服越しにメジャーが当たりだし硬直する。
採寸を終えて、メジャーが一気にもとに戻る。部屋の寒い空気は今では暖かい雰囲気で中和されていた。
鷺島「あ、もう十五分たっちゃったね」
颯田「そうだね......」
何か異常に近かったような気がしなくもないがルータさんが吹き込んだのか?いや、そんなわけないか。
なにか不思議に思うケントの顔を察しリツは焦りの表情を浮かべる。
なぜかわからないけど近づきすぎちゃった......嫌われてないよね......とりあえずルータに問いただそう。
鷺島「じゃあ......行こっか」
颯田「うん」
□ 第16.5話 疑問抱えるもう一人 □
くだらねえところに収容、いや居候、よく分からないが身元を保護された今現在俺は一人自分の部屋とやらで滞った調査書を見つめながら頭ん中にある何かについて考える。
情けをかけられたのか......
ウッドストンに生かしてもらっているのは事実だ。俺もラークと同じように首を切られていたのかもしれない。
ラークか......
アイツは色々と変わってしまっていたな。米国にいた頃はいちいち感情表現が誇張気味だけど、それがアイツの個性だと思っていたが、金に溺れている姿を見ると全て嘘だったとしか思えない。
まだ何も書いていない調査書をぐしゃぐしゃに握りしめる。すがるものがないというのはこんなにも苦しいものなんだな。いや、他殺がある......醜いな。
今思えば日本語を勉強して習得しラークや他の仲間と共に日本に来た。それから一年も経たないうちに皆別れて一人で行動し始めたな。
数々の他者を屍へと変えた手を見る。外見にはそこまで変なところはなく神経に異常があるような感触に取りつかれる。
最初はチョークを触っていたな。別に人を殺す必要はなかったし調査目的で一般人を装っていただけだった。
左の腹を撫でる。軽い痛みとともに過去に起きた転機が呼び起こされる。
まさか急に刺されるとは思っていなかった。突然の出来事に叫んでしまい失神してしまった。後に俺は日本他殺撲滅委員会の輩に刺されたのだと知った。
それからか、俺がナイフを自主的に握り始めたのは......
ドンドンドン!!
突然、ドアをノックする音が鳴る。嗚呼、アイツか
白亜「どーぞ」
ウッドストン「調査書はかけたか?......ってクシャクシャじゃねえか」
白亜「るっせえなぁ、こんなかったるいのさせんなよ」
ウッドストン「元教員だからリテラシーのがあるかと思っていたんだがな」
声が予想以上に反響しあう。部屋にほとんど何もおいていなかったことが原因だろうな。でもどうせ俺の死期は近いだろうから誰かが片付ける手前が減るだろうなと微かに思う。
ウッドストン「それはあとで俺がやっておこう。それよりも、作戦についてだな」
白亜「はあ?またあんな無茶苦茶な作戦するのかよ」
ウッドストン「今回は規模がでかい、DOPAMINEの残党を殲滅する」
白亜「......そうか、その作戦会議があるんだろ?早く行くぞ」
ウッドストン「と、その前に会っておいて欲しいやつがいてな」
そう言ってウッドストンの奴は部屋の外の廊下にいるであろう奴に声を掛ける。それに応じて若い女性の声が聞こえてくる。カツカツとなるそのヒールの音だけが確認でき、いざその人物を目撃した時、俺は啞然とした。五月雨レイナだった。
俺はそいつの指名手配犯として挙げられていた写真、夏祭りでの降雨、そして元他殺撲滅委員会会長の娘であるその人物の存在に恐怖した。そしてその会長が殺されたのはまさしく俺らのせいであった。
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