第20話 虐殺
なんだこれ、なにも見えないし口もテープで封じられて耳も聞こえない。当然身動きなどできるはずがない。
ケントは椅子に固定され、目も口もテープで封じられ、耳もヘッドホンらしきもので使えなくなっていた。
颯田「グハァッ!!痛い!!」
突然お腹に鈍器で攻撃される。何が起きているのか分からず恐怖が襲ってくる。
颯田「ギャァ!!くっ、はぁ、はぁ...ッ!!」
不格好な悲鳴を出してしまう。息が切れ、思考が安定しない。暗くてなにも見えない。でも触覚のみ際立って世界を知ることができてしまう。
???「ごめんねぇ~痛かったよねぇ」
ヘッドホンの圧迫感が消え去り、女性の声が聞こえる。そしてケントの顎に手を添えて口のテープを剥がす。
颯田「だ、だれ?」
???「私だよ、仁村アルマ」
颯田「何でこんなことを......」
仁村「なんでって?それは......」
目元でテープが剥がれていく感触がする。ケントが片目から見たのはアルマのおぞましく見開いた眼球がこちらを向き、裂けそうなほど横に広がった笑顔であった。
仁村「君が痛めつけがいのありそうな子だから」
ゴキッ!!
颯田「あ――――!!」
ヒールで足の小指を折られる。痛い痛すぎる。快楽で人を殺している。アルマがDOPAMINEの組織だと知る。
仁村「そういえば君、他殺の申し子とか言われてる子だよね?」
颯田「......はぁ、はぁ......」
仁村「本当は殺すことも痛めつけすぎてもよくないらしいけど、私だったら半殺しにするかなぁ、こうやって」
颯田「ぐっ!!」
もう片方の小指もへし折られる。徐々に削られていく心がいつまで耐えられるのか定かではない。だが、自分一人ではここから逃げることができない。
仁村「そうそう!!苦しんで悶えてよ!!」
身体中を叩かれたり、切られたり、殴られたり感覚が麻痺するほどの拷問。それにすべての意識が集中していた。恐怖なのにすがるしか気持ちを保てないのだ。
仁村「痛いよね?」
颯田「......はい」
仁村「喋れるならいけるっしょ!!」
颯田「ギ―――!!」
断末魔が永遠と響く殺風景な部屋、薄暗くて怖い。人に殺される恐怖はこんな感じなのだと何度も思い出される。
とっくに椅子から放り出され、ケントはうずくまって次の苦痛を待っていた。
バーテンダーの時と服装は同じはずなのに洗われて落ちてしまった血を纏っているような気がする。
仁村「そういえばあなたのこと、私たちの組織じゃ持ちっきりなのよね」
颯田「......ッ......ハァッ......」
仁村「なにも喋らなくていいわ、でも粗方調べて分かったの。この世界はなにかがおかしい、おそらく君のせい」
訳も分からない濡れ衣を着せられ、困惑するが脳の大半は痛みに対してしか見向きもしていない。
仁村「私たちも認識できないほどの矛盾があるはず」
颯田「......なにも......わから......ない......」
仁村「......そう。じゃあ、鷺島リツ、この子は詐欺の申し子?」
答えなかったらまた痛い目に合うのだという不安から口走っていた。なぜアルマがリツを知っているか何て考えもしなかった。
颯田「うん」
仁村「違う、鷺島リツは他殺の申し子じゃない。だって血が違う」
颯田「......え?」
リツは詐欺の申し子じゃないの?じゃあ何でそうよばれているんだ。疑問が増えていく。そして不安が部屋の全てを真っ黒に覆うほどに最悪が訪れた。
仁村「何で知っているか知りたい?これを見れば理解できるかな?」
颯田「――――――――!!!!!!」
ブロンズカラーの髪が十何本か束となってアルマの左手に握りしめられていた。
アルマの言いたいことがはっきりとわかることになるとは思わなかった。
颯田「何をした!!!」
仁村「ちょっと痛めつけようとしたら暴れちゃったのよね?」
颯田「はっきり答え......グッ」
地を這うようにアルマの足を掴もうとしたが、足蹴られる。痛い、でもリツの心配が勝つのかケントは鋭い眼差しで睨み付ける。
仁村「そんな目しないでよね」
颯田「答えろ!!リツは......リツはどうなったんだよ!!」
仁村「殺したよ」
颯田「............」
言葉がでない。なぜなら吐瀉物が詰まったから。視界が暗い。なぜなら身近な人物が目の前の悪魔に殺されたから。
颯田「ウッ――――――」
仁村「うわぁ......汚い、未成年には刺激が強かったかな?」
颯田「......ふざけるなよ」
ケントは自らを巻き付けている縄を無理やり切る。特筆して肉体が強い人間でもない男がしていいことでは無い。
想定していない自体が発生し、アルマが目を見開き、強張らせる。先ほどの威勢は死んだ。
仁村「どこからそんな力を!!」
颯田「力じゃない、怒りだ!!」
ドッダァーン!!
異常に鳴る踏み込んで擦れる音、相手の骨を玉砕しようと殺意が染みでたキックを相手の顔面に食らわせる。
何でだろう。リツは死んだというのに何で怒って闘っているんだ。いや、疑問など一切無いこれは復讐だ。
仁村「痛い!!女の子になんてことするのよ!!」
颯田「女とか関係ない。使命もなく人を殺すようなお前にその権利は無い」
仁村「君だって身近な人が殺されないと怒らないじゃん」
颯田「黙ってろ」
自分がしていることが間違っているのはわかっている。でもこの苛立ちをどこかで解消しないと気が済まないんだ。
仁村「グッ!!ウッ!!いやっ!!」
殴る殴る殴る、拳を握る力が恐ろしく強く感じる。殺意や恨み、痛みを全てコイツに食らわせる。
仁村「そんな痛めつけな――ウグッ」
ケントは机に置かれたリボルバーを見つける。それを手に取ると銃口を向ける。
アルマは冷たい銃の感触が額から伝わり、身震いし始める。
仁村「や......やめて......ごめんなさい......」
颯田「謝るのって、お前が生きるためだろ?」
仁村「ひっ!!」
颯田「お前がしたこと、そっくりそのまま返してやる」
ケントはアルマの右肩を撃った、左膝を撃った、左足首を撃った、右手首を撃った、左耳を撃った、右太股を撃った、左脛を撃った、左手の甲を撃った、喉仏を撃った。
ケントはアルマの左肩を撃った、右膝を撃った、右足首を撃った、左手首を撃った、右耳を撃った、左太股を撃った、右脛を撃った、右手の甲を撃った、腹部を撃った。両目を撃った。
仁村「......ホントハコロシテナイノニ」
バン!!
仁村「――」
颯田「......ごめんなさい」
ケントはアルマの心臓を撃った。と同時に最低最悪な後悔と『本当は殺していない』という言葉に立ち尽くして屍を眺めるしか方法はなかった。
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