灰のアリア

レクト

夜空編

第1幕 夜空のアリア 1

「まるで夜空みたいです。」


初めて会ったとき、レオンは私にそう言ってくれた。


あのときの私は綺麗な髪をしていたから、きっとそう見えたのね。

今はどちらも無くしてしまったけど、少し落ち着いたから日記に書こうと思う。


私はルミナリア王国の王セイランと王妃リリスの間に生まれた。

この国には神殿というものがあって、王家は神殿から許しを得て国を治めているらしい。


王女として生まれた私は、赤ちゃんの頃に神殿から神託を受けた。


「国を滅ぼす者」


それが私の受けた神託だった。


神殿は処刑命令を出したけど、お父様は拒否したらしい。ただ、私を外に出すことはできないとお城の離れに隠された。


ここからは壁とお城しか見えない。お母様は毎日私のところに来てくれたわ。本を読んだり、歌を歌ってくれたり、お化粧したり、二人きりだけど楽しかった。


「私もお父様もアリアを愛しているのよ」


お母様はそう言っていた。


でも、お父様は会いに来てくれなかった。


「ほら、お城を見て。あそこにお父様はいるわ。ずっとアリアを見守ってくれているのよ。」


お母様はそう言っていた。


確かに時折、お城の窓からこちらを見ている人がいたように思う。もしかしてあれがお父様だったのかしら。


レオンにあったのは10歳の頃だったと思う。


お母様が離れの警備として連れてきたのだ。


そのときのレオンはまだ少年という印象があったけど、黄金みたいな金髪で濃い青の髪の私とお母さまの近くにいると太陽みたいだった。


「アリア様はまるで夜空みたいです。」


私と初めて会ったときにレオンはそう言った。初対面なのに何を言っているんだろうと思ったけど、今にして思えば不敬よね。

王女に口説き文句を言うなんて。でも、悪い気はしなかったわ。


それからはレオンが私とお母様の仲間になった。


お母様がいないときは窓越しにレオンとたくさん話をしたわ。レオンは騎士見習いだったから、騎士の話をしてもらった。


レオンはお父様を尊敬していたわ。いつか自分も父のような立派な騎士になるってずっと言っていたもの。


私がレオンのお父様を奪ってしまった。


これについてはまたあとで書こう。


12歳になった頃、その日は昼間いい天気だったけど、夜になってお城が騒がしくなった。


何かと思って眠い目をこすりながら窓からお城を見ると、夜中なのにあちこちに明かりが見えて、人があちこちを走り回っていた。


ぼーっと眺めていると、レオンが走ってきた。


「今すぐ王宮から脱出します。」


息を切らしながら、私の手を取って部屋を出た。


これが初めての外出だったわ。物騒よね。


あのときは何が起きたのかわからずに泣いて暴れて、レオンに迷惑をかけたと思う。お母様がいないことが不安だったのだ。


あとで聞いた話だと、貴族の人が暴動を起こしてお城が襲われたらしい。


私はそのままレオンと何人かの人と一緒に馬で逃げた。レオンに荷物みたいに抱えられて体中痛かったし、馬の高さや速さが怖かった。


途中からほとんど目をつぶっていたもの。気が付いたら朝になっていた。眠っていたらしい。


我ながら大したものだと思う。


着いた場所はお隣のセフィリア王国のお城。お母様から聞いたことがあった。お母様が子どもの頃はセフィリア王国の王子とよく遊んでいたらしい。私は初めての外で、初めて見る大人の男の人に気後れしてしまって、レオンにずっとくっついていたわ。


大人の人が何か話していて、一人の偉そうな人が話しかけてきた。


「よくぞ無事で、アリア姫。私があなたをお母様の元にお送りいたしましょう」


セフィリア王国の国王サンダさん

子どもをあやすように優しそうな笑顔で私にそう言った。


――――


アリアに優しく声をかけるセフィリア王サンダ

彼の真意はどこに

続きを見てみると致しましょう

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