王女殿下の息抜き日和
田奈涼
第1話 ある日の息抜き 前
「ウィズ、そろそろ息抜きしましょう。」ペンを静かの置き、マリアン第2王女は執事兼勉強指南役のウィーズリー・セバに言った。
「殿下、勉強が途中です。息抜きにはまだ早いと存じます。」
「帳簿から不正を見抜くテストならすでに終わってます。そも、この問題簡単すぎよ。もっと難しい問題か面白い問題にして。」
「難しいものは機密に触れかねず、面白い不正の方はほぼないと言っていいでしょう。あればそれを使います。」
ウィズはマリアンの提案を拒否しつつも使用人に紅茶と菓子を持ってくるようハンドサインを送る。使用人からすれば数年間変わらない日常の一コマである。
「それで今日の息抜きは北方魔獣前線で大規模魔術を派手に使いたいのだけど。」
「殿下、これから息抜きをする前提で話を進めないでください」
「いいじゃない、私は息抜きできて幸せ、前線の兵士は楽できて幸せ、国は負担が減って儲けもの、みんな幸せで三方よしでしょう?」
「気楽に国内をふらふらされて両陛下は心配、前線の責任者は突然の要人の来訪に胃を痛め、私にはワープの魔法の負担がありますので三方悪しでしょう」
「幸せと不幸の数でいえばこちらの勝ちよ、支度して。」
ため息をついて、ウィズは支度を始めた。どうにもならないと悟ってしまったからにはもう止まらないからだ。ついでにいえばテストは満点だった。
ライドン王国、北方には魔獣や人類の敵対種族である魔族との闘いの最前線が敷かれていた。前線基地であるエスト城塞では無数の飛翔型魔獣の群れや一般家屋より大きいと目される大型魔獣との戦闘が近付いており、にわかに緊張がはしっていた。
「司令官、先ほどマリアン王女殿下が城塞の中から現われました。司令官に取り次ぎたいとのことでしたのてお連れしました。」
「は?あぁいやありがとう。対応する。」
「は、失礼します。」
連絡を寄越した兵士は敵の監視に戻り、司令官は眉間を押さえつつも王女の来訪を迎える心構えを整えた。
「ごきげんよう、ルーシ司令官。突然の来訪申し訳なく思ってますがお許し願います。」全く悪いと思ってないが形式に乗っ取り謝罪から入るマリアン。
「いえ、こちらに来られたのであればできうる限り歓迎しましょう。危険については承知と存じますが殿下であれば問題ではないでしょう。して、本日は如何なるご用件でしょうか?」司令官も形式に乗っ取り謝罪を受け入れつつ本題に入るように話題をふる。
「状況的にも手短に言います、一番槍替わりの遠距離魔法斉射を手伝わせてちょうだい。」
「かしこまりました。どのように、は聞かずともよいですな。」
「はい、協力感謝します。」
マリアンは満面の笑みで答え、執事のウィズと共に城塞の城壁に向かった。
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