狭間者「また明日編」 このスミレを豪は愛せるか
夕日が沈んでいく。
そんな空にふよふよと ひまわりの花が浮いている。
僕はひまわりを 眺めていた。
安心感を感じた僕は そのひまわりを 手に入れたかった。
……特別だと思った。
皆がひまわりの花を 手に入れると思ったから。
ひまわりにちょんっ、と 手を触れた。
……っ!
……僕はすぐさま手を引っ込めった。
怖かった。
僕には手に入れらない。
触れない。
すぐにそれがわかった。
こんなに すぐ近くにあるのに。
欲しい。 僕だけの花が欲しい。
どこで流れているか わからない滝がうるさい。
呼応するように 僕は小さな手を震わす。
頑張れ、頑張れば…… 僕だって、僕だってできるはず。
「これを……君に」
「えっ、私も……渡したくて」
ひまわりを与えあい笑う男女。
そんな愛を渡し合う人であふれかえる。
滝の音がもっともっと強くなる。
耳が壊れそうだ。
うるさい、うるさい、うるさい……。
ぼ、くは……。
「ねえ、ゴウちゃん大丈夫?」
「あ、ああ……」
そうだ。
今日は女友達と ひまわり畑に来てるんだ。
彼女のバックには片想い中の彼との おそろいのキーホルダーがある。
僕はそれからそらすように 後ろから振り返った。
するとひまわり畑から離れたところに スミレが見えた。
小さく見えるスミレに 僕は引き寄せられた。
「ゴウちゃん」
ひまわり畑で輝く遠い女友達をあえて見なかった。
あのひまわりのように地味に咲くスミレを心から愛せたらいいのに。
……明日から少しずつ愛してみよう。
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