第3話 好きでもない相手に
俺は萩原を家に入れた。
とはいえ俺は一人暮らし。
つまり萩原を連れ込んだという事になりかねない。
誤解はされたくはないのでほどほどにする。
「君の部屋片付いてるね」
「まあな。一人暮らしの基本だ」
「だろうけどさ。基本的には男子の部屋って汚いのが当たり前かと思っていたよ」
「まあ小説とか漫画のラブコメの男性主人公ならそうかもな。だけど俺は違う」
「ふふ」
萩原は笑みを浮かべながら周りを見渡す。
俺は居心地の悪さに頭を掻きながら「お茶入れるから」と告げてから立ち上がる。
萩原は「お構いなく」と笑みを浮かべる。
しかしまあなんというか。
まさか友人とかじゃなくて知り合いの女子を先に招き入れるとはな。
そう考えながら萩原を見る。
「なあ。萩原」
「ん?なんざんしょ」
「お前、出身は福岡なのか?」
「よく分かったねぇ。まあ博多弁使っている部分あるからかな」
「そうか。良い場所じゃないか」
「だよねぇ。福岡タワーとか豚骨ラーメンとか...有るし」
「あれ?豚骨ラーメンって久留米じゃないか?」
「まあね。でも博多=辛子明太子とかよりは豚骨ラーメンかなって思う」
「確かにそう言われると」
「でしょ?」
萩原は俺にニコニコしながらそう説明する。
俺はお茶を入れて萩原の前に出した。
それから萩原のちゃぶ台の対面に腰掛ける。
萩原は「お茶おいしいね」と柔和な顔をした。
「あー。まあ煎茶だからな」
「茶葉が違うんだね」
「まあな」
そして俺はお茶を飲む。
上手く入った気がするな。
そう考えながら俺はお茶を飲んでいると萩原が「お茶菓子持って来れば良かった」と苦笑した。
それから「おいしいお茶だし」とまた柔和な顔をする。
「粗茶だからな」
「まあまあそんな謙遜せず」
「謙遜はしてないな。ただの粗茶だ」
「うむ」
なんか爺さんと婆さんの会話の様だ。
そう考えながら俺は萩原を見る。
萩原は俺を見ながら「なんか爺ちゃんと婆ちゃんの会話だね」と話してくる。
なんで俺が思った事を言うんだ。
「確かにな」
「相性良いね。私達」
「まあ...な」
「うふふ」
そして萩原はクスクスと笑う。
それから静かになった。
少しだけ考える様な仕草をする。
俺は「どした?」と聞く。
萩原は「中学生の時さ」と言い出す。
「私をどうして助けたの?」
「それは...陰キャだったお前を助けた事か?」
「うん。私はそんなに魅力無かったよね?根暗で眼鏡で」
「関係無い。女性が困っていたんだ。だから助けたまでだ」
「...君は本当に...」
萩原は少し沈黙する。
それからゆっくり顔を上げた。
そして「私がさ」と問うてくる。
ん?
「私が君とお付き合いしたいってもし言ったらどうなるかな?」
「お付き合い...は?」
「まあ冗談も兼ねて答えて」
その言葉に悩む俺。
それから数秒間考えてから顔を上げた。
そして萩原を見る。
なんか期待しているのは気のせいか?
「女の子は外見じゃない。だから付き合おうと思えば付き合えるが。俺はそんな気は無いから」
「君らしい答えだね」
「ああ」
「...じゃあもう一つ質問」
それから萩原はいきなり立ち上がる。
そして俺の前に立ちはだかる。
な、なんだ。
そう考えていると萩原が俺を突き飛ばした。
「なにをしている?!」
「質問に答えるだけで良いから」
「いや、質問ってお前な」
萩原は俺に四つん這いで近付く。
なにを、なにをしている?!
俺は絶句しながら後退する。
すると萩原は更に近付いて来た。
「は、萩原。おかしいって。なにをしたいんだ」
「私はおかしくないよ?寧ろ真面目だね」
「馬鹿な。冗談はよせ」
「質問。私とセック◯出来る?やろうと思えば」
「は!?!」
「答えて」
それから俺をジッと見据える萩原。
胸の谷間が見えて真っ赤になる。
顔が近い。
吐息がかかっている。
キスが出来そうな位置だ。
な、なにを、言っている!?
「セック◯は大切な人と子作りの為にやるものだ。だから好きでもない俺なんかとやるもんじゃない」
「そう?私にとっては...」
そこまで言ってから萩原は立ち上がる。
それから俺に苦笑いを浮かべてから「ここまでにしとくよ」と笑顔になる。
俺は汗が噴き出していた。
あまりにホットだった。
「萩原。お前な」
「えへへ。ごめんね。挑戦する様な真似をして。でもさ。君のおちんち◯立ったね。えっち♡」
「ふざけるな。こんな状況では立つに決まってるだろ。一応俺は男だからな。他の男子にやるなよ?気軽に」
「やらないよ。...君以外には」
は?
俺は言葉に萩原を見る。
なんだそれは。
俺以外にやらないっ...て。
まさかそんな事。
いやまさかな。
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