第6話 お鎮鎮

「やったな!」

 俺は崩れ落ちるオーガを前にガッツポーズを取る。

 ヘイトを取っていたギンガが手を上げ、ゼロスもそれに答えると俺達のカバーに入る。

「やりましたね! ただ僕のMPは空です。怪我には気を付けてください」

 俺はアレスに手を上げて応える。

 しかしこいつは歴戦のヒーラーか。銃器の扱い。的確な判断。勇気も度胸もある。何より仲間を信じられる。確かにこんな奴がくれば前世が何か気になるな。俺がゼロスと会った時の事を思い出す。だが前世を聞くのはマナー違反だな。

「銃は使えるよな?」

「一通りは任せてください。さっきの奴なら大丈夫です」

 俺はスリングをアレスの服に掛ける。そしてブルパップアサルトライフルを召喚するとアレスに渡す。黒くてのっぺりとした斧になりそうな奴だ。

「左排莢だが撃てるか?」

 アレスは受け取った斧ブルパップライフルを左にスイッチすると発砲する。多少まごついてはいるが問題ないようだ。俺は斧ブルパップのマガジンを召喚すると俺の戦闘服に括り付ける。

「使うときはここから取ってくれ。なるべく自衛用な。撃つより移動を俺に合わせてくれ」

 アレスの返事を聞くとゼロスのカバーに入る。後は残党だそれほど労力はいらないだろう。


 あとは消化試合と思ってたがアレスの様子がおかしい。

 マガジンを取る手が怪しいというか、その目にも怪しいものが浮かび上がっている。見るとお鎮鎮が盛り上がっている。

 これはマズイな。折角の信頼できるヒーラーがオーク行きか。

「アレス。これ持ってくれ」

 俺はアレスの右手に俺のアサルトを持たせるとその背後に回る。

 全くしょうがないな。こんな所でも目覚めてしまうのか。俺のお鎮鎮は。

 俺は俺のお鎮鎮を握る。

「んほ♂ シコルさん!? なにを!」

「神速でシコル・ギウス!!!」

「んほぉぉぉーーー♂♂♂」

 アレスの♂が迸り光へと変わる。

 まだだな。まだシコり足りてねぇ!!!

「流石は俺のお鎮鎮だ! こんな所でガチシコリとはなぁ!!!」

「や♂、待って♂、待ってくださいシコルさん♂♂♂」

 俺は前に回ると逆手から順手で。

「こいつは手強い俺のお鎮鎮だ!」

「んほぉぉぉーーー♂♂♂」


「おいおいシコリ・スギダロ先生! いきなり新人を殺す気か!?」

 見かねてゼロスがやってくる。

「逆だ! 俺のお鎮鎮を救出中だ! こんなに俺から搾取しやがって!」

 俺は倒れたアレスからアサルトを取り返すとスリングを外す。銃を持ったままじゃ危ないからな。色々な意味でも。

「はぁ。折角の掘り出し物が。これで仲間には出来ねぇな」

「オークになるよりいいだろ。シコれば形態進化の魔物堕ちはないだろうしな」

「そりゃそうだがな。将来有望だってのに女で堕ちるタイプだったか」

「相当手強い変態だったからな。俺じゃなくてもいつか落ちてただろ」


「そんなことはありませんよ」

 意識の落ちてたアレスが息を吹き返す。俺達はその場で応戦中だ。敵の数はもう少ない。

「僕の理想がシコルさんだったんです」

 ? こいつ俺に気があるのか?

「僕の本当の望みはオネショタです。この体は僕が望んだ姿じゃない。本当なら僕はショタヒーラーとしてここに来ていたんです」

 なるほど。それはわかる。俺もそうだからな。

「ですが! それは仕様で禁止されてしまったんです! 今はもう18歳未満を連想させるアバターは使えないんです! そして僕はデフォルトキャラのイケメン美丈夫にされてしまいました!」

 アレスの顔に涙が流れる。

 なんてこったこいつは俺だ。お鎮鎮を失った今の俺だ!

「それでも僕はここに降り立ちました。理想のオネを見つけたからです! シコルさん! あなたです!」

 わかるぞ。俺も目の前に俺のお鎮鎮がある事で可能性を感じた!

「僕は必ずショタボディを手に入れてオネであるシコルさんにシコられたいんです!」

「よく言ったアレス! それでこそ俺のお鎮鎮だ! いつかショタの粗鎮鎮になったらシコリ倒してやるぞ!」

「シコルさん!」

 俺とアレスはガバッと抱き合う。

「ああ。本当はシコルさんに抱きしめて欲しい。小さな体で抱きしめられてオネを感じたい!」

「それは夢を叶えるまでお預けだ! それを叶えた時にシコルまでのな!」


「で? 俺は何を見せられているんだ?」

 ゼロスの声が呟く。

「シコルの奇行。多分こんなものじゃ終わらない。あなたは付いて来られるの?」

 ギンガがそれに返す。もう敵は掃討し終えたようだ。

「俺の基準は生き残れる奴だからな。それを見ればこれで生きてるコイツラは正に理想なんだろうが・・・。腕もたつ。モラルも高い。だが、」

「無理に言葉を探さなくてもいい。私はシコルと一緒に居るけど?」

「いや、俺も抜ける気はないんだ。ただ一緒に居る口実を探してるだけなんだ」

「これで死なないっていう明確な理由があるじゃない」

「これが俺の理想とする仲間ってのがな。・・・まあいいさ。それはおいおい探すとしよう」

 なんだそんな事か。俺は口をはさむ。

「だったらゼロス先生はED治療でいいじゃねぇか。俺達と一緒にお鎮鎮の真理に辿り着こうぜ!」

「え? ゼロスさん。そうだったんですか?」

 アレスが驚いたようにゼロスを振り返る。それにウンザリする様に返すゼロス。

「ああ。もうそれでいい。生やすなり小さくするなり、それでいい方法が見つかったら教えてくれ」

「決まりだな。俺達のお鎮鎮の真理に辿り着く旅が始まるぜ!」

 あきらめ顔のゼロスがギンガに向き直る。

「・・・おいギンガさんよ。これこそアンタはシコルについていけるのか?」

「勿論。あなたたち全員安全だもの。私はそれで満足」

「そりゃそうか」

 ゼロスの諦めた声が響く。こいつは自分だけが違うと思っているようだがどうだろうな。ある意味一番の難物のような気がするがな。

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