第6話 「裏切りの契約者(前編)」

それでは第二部 第6話 「裏切りの契約者(前編)」 をノベライズ化してお届けします。


ここでは「御影蓮=唯一の狭間契約者」という前提が揺らぎます。ヨーロッパで別の“記録者”が現れ、契約を改竄し始める回です。









契約戦記 フェイスコード 第二部 ―面影継承録―








第6話「裏切りの契約者(前編)」











序 ― カオス視点






契約の歴史は常に二つの面を持ってきた。


光と闇。


署名と抹消。




だが――「記録」を握る者は一人ではなかった。




御影蓮が狭間の契約者だと信じていたのは、人類の傲慢にすぎない。


ヨーロッパの古都で、もうひとつの影が目を覚ます。




人類が顔を失うまで――あと14日。









1 ― コスモス視点:異常な署名






フランス・リヨン。


古い大学図書館で、契約の異常が報告された。




御影蓮はエリス、セイレンを伴い現地に到着する。


「署名者の名前が……すべて上書きされている?」




依頼人の学生は震えながら契約書を差し出した。


署名欄には自分の名前が書かれていたはずだった。


だがそこにあったのは――




『クローディア』




「……私じゃない。誰が勝手に……?」




蓮の胸に冷たい感覚が走る。


「これは……契約を“改竄”できる者の仕業だ」









2 ― カオス視点:もうひとりの狭間






図書館の闇の奥から、ひとりの女が現れた。


長身で、黒い羽織を纏い、瞳は銀色。




彼女は書記官のように契約書を手にしていた。


「はじめまして、御影蓮」




蓮は驚きに目を見開く。


「……君は、誰だ?」




「私はクローディア。もうひとりの狭間契約者」




彼女がペンを走らせると、図書館の署名簿が次々と書き換わっていく。




【条文:改竄契約】

「既存の署名を無効化し、任意の署名に置き換える」



「契約の記録は、ひとりだけが担っていたわけじゃないのよ」









3 ― コスモス視点:対峙






エリスが守護面を構える。


「契約を勝手に書き換えるなんて許せない!」




セイレンも歌を放つ。


「人の声も名前も奪わせない!」




だがクローディアは一歩も動かず、ただペンを走らせる。


【エリス】→【抹消】


【セイレン】→【無音】




二人の面に亀裂が走り、身体が薄れていく。




「待て!」


御影蓮が叫ぶ。


「なぜそんなことをする! お前も契約を記録する側なら――顔を守るはずだろ!」




クローディアは微笑んだ。


「守る? 違うわ。私は“正す”の。契約が歪んだまま続くなら、いずれ顔は滅びる」









4 ― カオス視点:裏切りか、真実か






クローディアはペンを宙に掲げる。


「あなたが狭間に立ち、戦士たちを召喚したことは知っている。


 でも、それは本来の契約から外れている。


 だから私は“正しい狭間”として、あなたを無効化する」




闇の図書館の本棚が揺れ、無数の契約書が宙に舞う。


その一枚一枚が刃となり、御影蓮に降り注ぐ。









終 ― コスモス視点






蓮は必死にタブレットを掲げた。


「俺は……面影を繋いだだけだ! それが間違いだというのか!」




本の刃が光を裂き、彼の守護面に亀裂が走る。


エリスとセイレンが必死に踏みとどまるが、改竄の力は圧倒的だった。




「御影蓮。狭間はひとつじゃない。


 次は――どちらかが消える番だ」




クローディアの銀の瞳が冷たく輝いた。




人類が顔を失うまで――あと14日。









第6話「裏切りの契約者(前編)」・了









これで第二部 第6話が完成しました。




新キャラクター:クローディア(もうひとりの狭間契約者)

能力:契約署名そのものを改竄・上書きする

エリス&セイレン敗北寸前、蓮も危機

カウントダウンは あと14日

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