黒い虹

天月 光

1. 呪い

遠い遠いはるか彼方にかつて「楽園」と呼ばれる島がありました。この島以外の場所では、争いが絶えず、動物たちも避難するようになり、荒れ果てていましたが、「楽園」は違いました。花は咲き乱れ、宝石のような鳥たちが空を駆け巡り、星が煌めく頃には人々は広場に集まって、皆んなでダンスを踊り、ご飯を食べて今日という日を祝うのです。まさに楽園の風景そのものでした。


さて、ある静かな夜、この島の西の丘にどっしりと構える大きな木ではいつものように鳥たちがそれぞれの寝床でくつろいでいました。

少しずつ夢の世界に入る者が増え始めた頃合いに、空を貫くように眩い雷光が木に降り立ちたのです。その衝撃は、あの大木の幹という幹、枝という枝を揺らし、鳥たちは慌てて逃げ惑いました。

また辺りが静かな夜を讃えるようになった頃、鳥たちが先程雷が落ちた場所をそっと覗き込むと、何ということでしょう!

どんな影よりも暗く、夜空よりも黒い、世界中の黒を集めたような雛鳥が泣いていました。

誰よりも美しい色が自慢の鳥たちには、どうしてもこの雛を仲間とは認められません。

そいつを叩き落とせ、という声が広がり始めた時、バッサバッサと大きな羽を空に広げて長老の鳥が皆の前に止まりました。

「確かに黒は不吉だが、こんなまだ小さい子にそんなことをするのは見当違いであろう。

しかも、雷に包まれて生まれた子じゃ。

叩き落としでもして神の恨みを買いたくはないじゃろう?」

長老のこの言葉に鳥たちは顔を見合わせました。少しのざわめきが木を駆け巡った後、若い鳥たちが木の枝を集めて、雛鳥の巣を作り出したのでした。

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