クラスの三大美少女ではなく、地味子を選んだら、ヒロインになったんだが。

イコ

第一部

第1話 人助けならいいよね

 僕はクラスの男子ほど女子に興味ない。



 ただ、高校になると周りが付き合い出して、誰々が可愛いと男たちが話を始める。


 グラビアアイドルの写真集を見せてきて、SNSの画像に綺麗な女性が流れてくる。



 だからこそ、異性という存在を意識してないわけじゃない。



「なぁなぁ、ソラ。お前はどの子がタイプだ?」



 親友で絶賛彼女募集中である、高藤輝タカトウアキラの問いかけに対して、意識がクラスメイトの女子へ向けられる。



「やっぱり学年で一番人気の桐谷瑞稀キリタニミズキさんか?」



 清楚系でみんなから頼られる桐谷さんは、クラスで一番可愛いと言われている。

 黒髪を綺麗に切り揃えて真面目なタイプ。スタイルも良くて、男子にも普通に声をかけてくれて人気者だ。



「それとも三浦結愛ミウラユアさんか?」



 ギャル系で明るいムードメーカー、男子が注目する胸の大きな女の子だ。

 茶髪ロングに短めスカート。気さくな感じで男女関係なく友人が多い。



「俺的には、日野明日香ヒノアスカさんとかもいいよな」



 小麦色の肌にバスケ部のアイドル、明るく誰にでも挨拶をしてくれて、男勝りなベリーショートがスポーティーで男子からの人気が高い。


 

 だけど、そんな三大美少女達が、僕やアキラと釣り合うとは思っていない。


 何よりも、女性に興味がない僕としては、そんな人気者の女子よりも気になる子がいた。



「うーん、じゃ庵野紘子アンノヒロコさんで」

「はっ?! お前マジで言ってる?」



 アキラは教室の隅っこで、一人でお弁当を食べる髪の長くてもっさりとした同級生に視線を向ける。



 ハッキリ言えば、美人ではないと思う。(ハッキリと顔を見たことがない)



 普段は、瞳が見えない分厚いメガネに、顔を隠してしまう重そうな黒髪。


 整えていない乱雑な寝癖も残っている。



 女子高生にしてはオシャレに全く気を遣っていない。



 だけど、他の男子と被らないようにしながら気になる女子を探すと、どうしても庵野さんに視線を向けてしまう。



「お前、B専かよ」

「別に、庵野さんは物静かで、騒がしくないからいいだろ? 雰囲気が好きなんだ」

「ハァ〜、人の好みはそれぞれだからいいけどさ。もっとあるだろ? 顔が可愛いとか、胸が大きいとか、明るくて人気あるとか」



 アキラが提示した条件に当てはまるクラスの人気者美少女たち。



 気持ちはわかるが、前面に欲望を曝け出している時点で、モテないのはそういうところだぞ。と言いたくなるが、グッと堪える。



 親友を貶したいわけではない。からかってみるのもいいが、いい加減に本気で彼女を欲しいと思っているこいつは真剣だ。



 だからこそ、教室でバカにして、アキラの好感度を下げてしまうのは、僕としてはやりたくない。



「はいはい。そういう子は絶対彼氏がいるだろ? それだけ可愛くて、他の男子が放っておくかよ」

「まぁ、それもそうなんだけど、俺もそんな子達と付き合いたいぜ」



 アキラは悪いやつじゃない。顔もそこそこ普通で、成績も普通。女性に対して失礼なことを言ってしまうところはあるが、彼女ができないほどじゃない。



 これがラノベなら、僕もアキラもモブ扱いで、クラスの壁絵にすら使ってもらうことはできないだろう。



 ただ、ここは現実で、親友に彼女ができて欲しいと僕は願っている。



「俺のことを世界で一番好きですって、言ってくれるような女の子が、どこかにいないのかなぁ?!」

「どこかにはいるだろ」

「どこだよ?!」

「アフリカとか?」

「遠いよ! もっと身近に!」

「そのうち出会うだろ」


 

 アキラの反応が面白くて、ついついからかいたくなる。



 そんなバカな話をしていた昼休みを終えて、帰宅する放課後になった。



 僕は学校の部活には入らず、小学生の頃から続けている空手道場で汗を流した。



 有段者の資格も取れる実力はあると師匠に言われているが、有段者になれば何かと責任が伴うと父親から言われ、黒帯を取得するのは諦めた。



 僕が使う空手は実戦形式で、ハードではあるが楽しく続けている。



 テレビで見るような大会も存在して、いつか出てみたい。



 ハードな練習を終えて、帰宅する途中……。



「やめてください!」



 不意に聞こえてきた声に振り返れば、同じ高校の制服を着た女子が、ナンパ男二人に手首を掴まれて、路地に連れ込まれようとしていた。



 通行人は見て見ぬ振りで誰も助けない。こういう場面に出くわすのは初めてだけど、他人に無関心なのか、関わって面倒に巻き込まれるのを嫌うのか……。



 僕はため息を吐いて、そちらに向かった。



「お兄さん達、嫌がっているみたいだから、その辺で」



 僕は二人の手首を掴んで捻りあげる。



「グアっ!?」

「なっ、なんだこいつの握力」



 女の子にしているように、強引に掴んであげた。


 もちろん、素直に引いてくれるなら、痛い思いをさせるつもりはないが、反撃されるのも面倒なので、問答無用で捕まえた。



「無理やり女の子の手首を掴んで、やめてくださいと言われてもやめないんだよね? なら、お兄さんたちの手首を掴んで、握り潰しても文句は言わないよね?」

「なっ!? やめてください!」

「え〜、女の子にはやめなかったのに?」

「すっ、すみませんでした」

「謝る相手を間違えてない? 俺、握力100超えているから、人間の手首ならこのまま握り潰せるけど」



 さらに手首を掴む手に力を込めれば、ミシミシと骨が軋む音がする。


 実際は60ぐらいしかないけど、脅しにはいいよな。



「ひっ?! すみませんでした。もう絶対にあなたに悪いことをしません!」

「おっ、俺も! もうやめます。だから許してください!」



 二人の男は涙目で女の子に謝った。


 茶髪に少し悪そうな雰囲気なのに、随分とあっさりだな。


 だけど、女の子は僕の登場から、急展開な状況についていけずに、驚いたままフリーズしていた。



「許せない? このまま、この人達の手首を破壊した方がいい?」



 女の子に問いかけると、フリーズが解除されて、彼女の焦点が僕に止まる。



「いっ、いえ、大丈夫です! 許してあげてください」

「了解。優しいね」



 二人の手首を離すと、すぐに逃げようとしたので、襟首を掴んで、転がす。



「ねぇ、お兄さん達。もしも、次こんなことしているの見かけたら、どうなるかわかるよね?」

「ひっ! もう絶対にしません!」

「二度とあなた様にはご迷惑をおかけしません!」

「うん、行っていいよ。約束は守ってね」



 僕は二人を離して行かせてあげる。



 ふぅ、あまり人と争うのは嫌いだけど、人助けならいいよね。



「あっ、あの!」

「うん?」

「助けていただきありがとうございます」


 

 綺麗な顔に、髪が艶々で整えられた子だった。

 制服は同じ学校だけど、見たことがない。



 多分、別のクラスか、別の学年なんだろう。



「いいよ。君が無事でよかったね」

「!!!」



 彼女が安心させようと笑いかけたつもりだったけど、驚かしてしまったようだ。



「あっ、あの! お礼がしたいのです。ご連絡先を聞いても?」

「僕の? うーん、気にしなくてもいいよ。あっ、僕は無形空ムケイソラ、また何か困ったら声をかけてよ。ああいうのは得意なんだ」




 僕はそのまま女の子を連れて大通りに出た。


 名前を聞いた方が良かったかもしれないけど、まぁ人助けができたからいいかな。



 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 あとがき


 どうも作者のイコです。


 GA第二弾。


 もう思いつきのヤケクソですw

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