第8話 潜伏

結局民事裁判では霧島の働きにより15万円と謝罪文の掲載で和解が成立した。

順北は霧島と龍平が見てる前で謝罪文を書かされSNSに掲載させられた。


「お前にいってもわからんと思うがなあ、あの金はお前がワシがいなくなっても生きてくれるようにって貯めてたものなんじゃ。それをなんだ?配信で『オラには7桁金があるだで、お前らとはちがう』って煽った結果資産があると認識されて損害賠償請求だ?ほんとお前には呆れたわ。もうお前が野垂れ死んでも知らん。勝手にせい」

実父にこう吐き捨てられた順北であったが口から出たのは予想外の言葉だった

「オトサン…ごめん…オラ心を入れ替える」

「そうやって口先だけだったじゃろ。なら行動で示せ」

順北は本当に行動で示した。具体的には龍平の家事を手伝うようになった。また恵美須に頼みゴミ拾いのボランティアも開始した。

ぎこちないものの近所の人と出会ったら挨拶を返すようにもなった。

(霧島先生の説教が相当効いたようじゃな。たまにはあいつをねぎらってやるか)

「おい順北、お前最近頑張ってるな。今度の保護観察所帰り、回転寿司でも食いに行くか」

「オトサンありがとう、オラもっとがんばるから。じゃあ図書館いってくるだで」

「おお、いってらっしゃい」

「あいつも変われるんだな」

龍平は数十年ぶりの息子の成長を喜んでいた


しかし順北は何も変わっていなかった、いやむしろ悪化していた

図書館での公共パソコン、本来は利用者が調べものをするために善意で置かれたものだ。

これを使いコソコソSNSをやっていた。

「村岡、オバエは裁判どうだっただで?」

「俺は罰金10万っす。まあ俺は社長だからすぐ払えたけど?」

なおこの村岡は60代の無職であり10万円は弟に泣きついて払ってもらったものである。

「そうだでな。ところであいつの女の職場わかっただで?」

「すんません、まだ難航してますわ。あいつ引っ越したみたいで」

「ところで、新しくつぶしてほしい人がいるだで」

「…霧島、弁護士ですか?」

「そうだで、こいつは客に謝罪を強いるような極悪弁護士とかいろいろ教えてあげるだで」

「おまかせパックで!」


「にしし。設定でメッセージは1時間で消えるようになってるから今度こそ証拠は残らない。オラの復讐劇の始まりだでえ!」

順北は細い目をギラギラと光らせ再び社会に牙を剥き始めた


一方霧島は事務所で出前のうどんを食べていた。

「すまない、紙エプロンの交換をお願いできないか」

「霧島先生うどんたべるの下手くそなのによくたべますね」

事務員がからかいながら替えの紙エプロンを持ってきた

プルルルル!

「あ、霧島先生大丈夫です私が出ます。はい霧島法律事務所でございます。え!?そんな事実はございませんが…はい、はい…また折り返し電話します」

「どうしたんだね?」

うどんを食べ終わった霧島が事務員に尋ねた

「お前のとこの弁護士は無理矢理人を謝罪させるようなところなのかと苦情が」

「なんだって?なんと名乗っていたか」

「はい、少々お待ちくださ」

プルルルル!

「俺が出る。はい霧島法律事務所霧島が承りました」

「おい、お前があの悪徳弁護士か!」

電話主は激昂していた

「はあ…どういうことでしょうか?」

「とぼけても無駄だ!ネットにたくさん書いてるぞ!あの弁護士は依頼者に土下座を強いたり金のない人を揺すったりしてるって!」

「なっ…!そんなことはしてない!」

「はあー自覚なしと。あとで懲戒請求も送ってやるから覚悟しとけよ」

ガチャン

プルルルル

プルルルル

プルルルル

次々と事務員が電話を取り身に覚えのないクレーム対応に追われる、霧島は恐る恐る自身の法律事務所を検索エンジンにかけてみた

根も葉もない誹謗中傷がたくさんかかれており炎上していた。

「なんてことだ…」

霧島は頭を抱えた

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