第2話

第四話 変貌


本物の回復を待つ仮の一幕のはずだったが、長瀬は壇上で語る内容を少しずつ変えていった。


「救済は来世ではない。今、この手で掴み取るものだ」

「従順であることこそ、真の光明だ」


信者たちは熱狂し、寄付金は急増。若者が家族を捨て、会社員が財産を投げ打った。世間は「カルト」と揶揄し始めるが、長瀬は鏡の中の自分に問いかける。


「いつの間にか、俺は天城蓮生そのものになっている――いや、それ以上か」


営業時代には決して味わえなかった、絶対的な権力の甘美さ。それは麻薬のように血管を駆け巡った。


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第五話 影と本物


ついに本物の教祖が回復の兆しを見せると、黒服たちは長瀬に告げた。


「役目は終わった。君はいらない」


だが長瀬は低く笑った。壇上で味わった熱狂と支配の快感を、もう手放せなかったのだ。


「不要なのは――俺か? それとも、あの病人か?」


その問いは、黒服の男たちを暗い影で震えさせた。


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第六話 寄生者の秘密


夜、長瀬は、奥の離れにある病室へ呼び出された。そこには、点滴に繋がれた"本物"の姿。しかし、しっかりとした声で天城は告げた。


「私は、もう天城蓮生ではない」


数年前から脳と脊髄を侵す寄生ウイルスに取り憑かれた異形の生命体。それが、目の前にいる天城だった。

寄生ウイルスは宿主の記憶を完全コピーし、擬態する力を持つ。寄生ウイルスは、増殖したかったが、突然変異で産まれたただのウイルスにはその方法が分からなかった。

その繁殖研究として《光明の道》は長年の実験場だったのだという。


天城=ウイルスは提案する。

信者の癌を"浄化"する力を長瀬に与えよう。だが吸い取った癌細胞は長瀬の体内で増殖してしまうので、定期的に他者へ注ぎ込まねばならないという――歪んだ代償を伴って。


「……面白い提案だ」


長瀬の目が、暗い光を宿した。


第七話 救済という名の支配


翌日、再び壇上に立った長瀬は宣言した。


「天の力による救済の儀式を開く」


末期癌の信者たちの頭に触れた瞬間、長瀬の手から柔らかな光が漏れ出し、黒い靄が螺旋を描いて掌に吸い込まれていく。病魔が文字通り"見える形"で消失する奇跡に、人々は絶対的な信仰を捧げた。


だが長瀬の内側では、吸い取った闇が蠢いていた。

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