第5話 めっちゃ痛い、僕の非日常
僕は、いつものように朝十時、目が覚めた。
そして、
最近の僕の日常は、子供の
その上、彩の母の
酒屋は日中余り忙しくなく店を開けるのも午後を過ぎてからで、忙しくなる夕方頃に彩が京一を保育園から迎えて帰って来る。かといって店を手伝う訳でもない。
いつの間にか
今にして思えば全て、僕の理想とする家庭像とはかけ離れているような気がする。彩との夫婦の夜の営みにしてもそうだ。彩が言うにはSEXの多い夫婦は離婚率が高いからと、その営みは月に1回、毎月第2火曜日と決まっている。
トーストを食べ終えて、ティーカップに、温めて措いたティーポットから紅茶を移し一口飲んで、
その時、お千代がいうには僕の周りにはもう
お千代は自宅にある神殿で、この時代での僕と姫の生まれ変わりのことを占って
僕は、
友達が頑張っているのを見て、
もしや、姫隠しの山とは、あの昔
僕は、
時間も午後の一時を過ぎ、店のシャッターを開け棚の商品の
「アッ、
月に二、三回は
「へエー、このクッキー、松子さんが焼いたの?
「エエ、それは
「紅茶はお砂糖を入れていないけど、僕も甘いものは大好きだよ。それじゃ、松子さん、ひとつ頂きます……」
僕は、一口大目にかじった。サクッと歯切れはよかったものの、その後
「坊ちゃん、大丈夫ですか? どうしたんですか? もしかして、
「うー、みず、水……水を下さい。松子さん、クッキーにどれだけ塩を入れたんですか?」
「エ! しおって、お塩のこと? 勿論、ほんの少々よ……って、まさか! アアー、私ときたら、塩を入れたうえに、更に……砂糖と塩を間違えたんだわ。嗚呼、私ったら
松子さんは、やっと気付いたのか側に在ったティーポットから紅茶をカップに入れて、僕に手渡したのだが、僕は熱くて更に唇と舌を焼いて仕舞い。松子さんはその様子に
しかし、奥の方からやたら何かものを
僕は、仕方なく冷蔵庫を開け、売り物の冷たいサイダーを飲んで、口の中を
「大丈夫ですか? どうかされたのですか?」
とても、涼やかな声だ。僕に、心配そうに声を掛けてきた。
僕が、視線を上げみると、何度か見たことの有る四十才くらいのきれいな女性だった。
「アッ! 嫌え、大丈夫です」
僕は、立ち上がって、そのひとの瞳を間近に見た。何か運命を感じる。初めて小夜姫に逢って感じた時とは比べものにならない程に微かではあるが、何故だろうあの時のときめきなどではなく心がすごく落ち着くというか、なんだか
「坊ちゃん、はい、みず、水ですよ。アラ!
松子さんは、僕に水の入ったコップを渡し、志緒梨というひとの背中に何かを捜す
「香ちゃんは? 志緒梨さん、病院では何ていわれたの?」
「ええ、病院では今度もまた
そのひとは後ろを振り向き、いるはずの娘の姿がなかったのだろう。顔から血の気が一気に引き、娘の名を叫んだ。
「か、かおりー。どこ、何処にいるの? 松子さん、さっきまで私の後ろにいたの。一緒にこのお店の前までは……」
彼女の視線の先を見ると、店の入口の外に誰かが倒れているのか、横たわった膝からの足先が眼に入った。
僕は急いで店の外に出て見ると、セーラー服を着た女の子がうつ
僕は駆け寄り、その子に声を掛けながら、抱き起こした。
「大丈夫ですか? 意識はありますか? 大丈夫ですか? だい、じょう……さ、や……小夜姫……」
僕が、
僕が、その子の上半身を抱きかかえる側から、その子の母が手でその子の髪を
「お坊ちゃま、ご心配をお掛けしました。この子は、大丈夫のようです……この子の
エッ! やっと僕は運命の小夜姫の生まれ変わりに逢えたというのに、僕は何もすることも出来ずに、せめて……せめて、僕は何をこの子と、この母にいったい何を伝えようと……嗚呼、自分でも
「お
「……ウッ、ウン」
「こんな時、助かるのになぁ……」
「ウッ、ウン、そう・・・」
「お千代だったら、なんとかしてくれるのにな……」
「ウッ、ウン、?! って、もしかして、まさか……また!?」
僕は、視線を怖るおそる声のする方へやると、おかっぱ頭のお千代が……僕と、その子の母の顔の間に……やっぱり、いた。
それも、真っ白な上半身の着物に、真っ赤な
「オイ、純一、なに
「アッ、嗚呼、ありがとう……それで、これからどうすれば……いいの?」
「ンッ、ウーン、そうだ、
「アッ! でも、彩と京一が夕方には帰って来るから……」
「純一、お前は今日の新聞を見ただろう? だったら分かるだろうによう。なんだよ、その顔は未だ分かんないようだな……もうホントに、この
僕の、抱えているこの子の母の志緒梨は、僕と
「アッ、すみません。この子については僕たちに任せて貰えないですか?」
「エッ! 任せて、ってこの子、香に何をするんですか?」
「エッ! エーと、あのー……ですね」
「純一、お前は
「アッ、お坊ちゃん、何をされるんですか? この子にいったい……」
「まあまあ、お母上、此処ではなんですから、先ずは一緒に奥に行きましょう」
女の子を抱えた僕の後を、お千代はその子の母を
「さあ、純一、何か温かいものを此処におられるお母上にお出しをしてあげてくれ」
お千代は、その子の母には
見ると、僕の足のその
そして、恐るおそるガラスの破片を抜くと、今度は鈍い痛みと鮮血が一気に
テーブルの上に在ったティッシュペーパーで血止めをしながら、食器棚の上から救急箱を取り、ガーゼと
「オイ、純一、どうしたんだ? その足……」
僕が、台所での
「そう言えばなぁ……あのな、純一。俺が此処にバイクで来た時にな、お前のいつも乗っている営業用の車に、男が何やらこそこそとしているようだったけどなぁ……その足だと、大変だろうなあ?
「エッ! な、何で? なんで今頃……ウーン、分かった。あいがとう。行ってみるよ」
床に触れる度に痛みがズキンズキンとくる足でびっこをし、僕の足の白い包帯とびっこをする
中には手紙が入っていて、内容は唯『純一、お前の友達の京本京平と妻の彩そして、母の高子には気を付けろ!!』とだけあった。そして、更にその封筒の中には写真が三枚入っていた。
その写真には、僕が最近気になり出して来たものの答えがあった。
それは、彩と京一、そして京本の三人が楽しそうに何処かレストランなのだろうか? テーブルを囲んで話をしている……まるで、本当の家族のようだ。もう二枚の写真は彩と京本、そして京一がそれぞれ抱き合っている。
僕は、誰が出したのか分からず、
僕は、
しかし、負傷した足がまさに
そして、僕はそこにやっとの思いで駆けつけたのだが、ただ呆然と立ち
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