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夕方。噴水の縁に「取次屋」と書いた板切れを立てかけた。
さて……ひとまず次の仕事に行くか。
農家の倉庫。藁屋根の下、収穫した穀物や野菜が積まれている。
農家のおっさんが腕を組んで俺を見た。
「夜通し頼む。報酬は銀貨2枚。仕事をちゃんとやれば作物も分ける」
おっさんは眉をしかめながらつぶやく。
「最近は魔物が収穫庫の周りをうろついてるから定期的に人がいることを教えにゃならん」
俺はすぐに口を開いた。
「獣除けの松明はそっちで用意しろ。見張りだけの募集だったのに実際は追い払う役も含まれてたんだからな。報酬が少ないんだからそれくらい工面してくれ」
親父が眉をしかめたが、しばらく考えてうなずく。
「わかった……松明は用意する。収穫庫に火が移っちまわないよう注意しろよ」
「交渉成立だ」
隣で陸上女子が囁いた。
「おぉ……ボスやるじゃん」
「このくらい当たり前だ」
たぶん、こいつは体育会系で上下関係の重さを叩き込まれているから、奴隷がご主人様を称えることの重要性が分かってるんだろうな。
俺たちは倉庫の周りの林を巡回し始めた。夕陽が差すと木々の影が長く伸びる。
「うぅ……ちょっと怖いんだけど」ギャルが袖を掴んでくる。
「暗い森とかマジ無理。てか、音したよね?」
「したっしょ? 絶対なんかいるって」
委員長は涼しい顔。
「耳障りな声を上げても魔物を寄せるだけよ。落ち着きなさい」
陸上女子は楽しそうに鼻を鳴らした。
「へっ、肝試しだな。こりゃ走り回るのにちょうどいい」
「持ち主から離れすぎたら首輪の効果で意識が飛ぶわよ」
「……これそんな効果あんの?」
「なかったらなんのための首輪なのよ」
えぐ……。
なんでこいつはそういう世界観が当たり前みたいな顔してんだ。
「カサッ」
木の葉が揺れる音。
「ひぃっ!」ギャルが飛びついてきた。
柔らかい感触が腕に当たる。
思わず笑みが漏れる。
こいつは3人の中で二番目におっぱいがデカい。
一番デカいのは、もちろん三つ編み眼鏡の委員長だ。
「なんだか肝試しみたいで楽しいぜ」
委員長が眼鏡を押し上げる。
「あなた、緊張感が欠けてるわよ」
陸上女子が笑い声を上げる。
「いや、これはこれでおもしれーじゃん」
夜風が林を抜ける。
俺たちの足跡と鎖の音が続く。
倉庫のまわりを巡るたび、ギャルが声を上げ、委員長が冷たくたしなめ、陸上女子が騒ぎを笑う。
その光景は、妙に心地よかった。
夜が明ければ銀貨2枚と作物。
小さな稼ぎだが、俺にとっては確かな一歩だった。
そしてなにより――
女が怯えて俺にくっついてくるのは、最高の感覚だ。
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