第14話 発泡スチロール無限ループ事件
午後二時ちょうど。課内の電話が鳴った。
この時間帯といえば――。
職員たちは一斉に顔を見合わせ、空気が凍りつく。
「……来たな」
運悪く新人の佐藤が受話器を取った。
「はい、環境課でございます」
受話器の向こう、聞き覚えのある声。
「また言わせてもらいますよ!白い発泡スチロールの食品トレイは資源で集めてるのに、家電の箱に入ってる発泡スチロールは、なんで集めないんだ!」
課内に一瞬、氷のような沈黙。
ベテランが小声でつぶやく。
「出たな……プロ市民」
新人は震えながら説明を始める。
「え、えっとですね、食品トレイはスーパーさんが回収ルートを持ってまして……」
「材質は同じでしょ!」
「で、ですが……サイズが違います!」
苦し紛れの返答に、課内の同僚は机の下で腹を抱える。
佐藤は必死に続ける。
「緩衝材は大きさや密度がバラバラで……異物も混じりやすくて……再商品化が難しいんです」
「じゃあ私が削って、ぜんぶトレイ型にして持っていきます!」
――課内フリーズ。
「……加工工場でも開く気かよ」
「もう職業病じゃなくて職業そのものだな」
「いや、むしろその情熱を市に寄付してほしい」
電話は一方的に切れ、佐藤は放心状態で受話器を置いた。
ベテランがぽつりとつぶやく。
「……次回から、この件は“資源化困難物”じゃなくて、“人間ごと困難物”で処理したいな」
課内にドッと笑いが広がった。
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