第10話 抵抗
一方アナも魔物の襲撃を受けていた。
村に魔物が向かってきているのに、こちらにも向かっている。すでに二手に分かれてたというのか。
それに、この魔物の数は、恐ろしい数だとアナは思った。
これでは、攻め切れない、逃げ切れない。
まずい。そう、アナは思った。
実のところアナにもそこまで体力は残されていない。
アマスターに精神を分け与えるか?
いやだめだ。そんなことをしたら、世界が大変な事になる。
思考が巡っている間にも、休む暇もなく魔物が向かってきている。必死に倒していくが、全く、かなわない。これだと、体力切れが近い。
アナは必死に逃げていく。向かってくる魔物の集団から。だが、囲まれてしまった。もはや逃げられない。そう感じたアナは、竜を自分の髪飾りから出した。
まだ体力は回復しきっていないと思うが、仕方がない。
(無理を聞いてください、私の竜よ)
と願う。
「読んだかい? 私の主人よ」
「連日で悪いけど、あの魔物から私を逃がして。ついでにシドさんもつれて」
「分かりました。私の主人よ」
そして、竜はアナをのせて空を飛び始めた。
魔物達は地の上で、ただその姿を眺める事しかできなかった。
そして村に戻ると、シドが一人戦っていた。
だが、村の様子を見ると、もう、死体が転がっていた。
そうシドは守り切れなかったのか、とアナは思った。
「シド、竜に乗ってください」
「ああ、分かった」
シドは竜に乗り、二人で空を飛ぶ。
その際にシドは神妙な顔をしている。アナはそれを見て、複雑な気持ちになった。シドはあっ森切れなかったことに対し罪悪感を感じている。
「シドさん、貴方のせいじゃないすぁう」
「でも、守れなかったんだ。それじゃあ、意味がない」
「あなたのせいじゃない。魔物のせい、魔物を動かしている上の魔族のせいよ」
そう、いるであろうゾルティアの事だ。
「……そうだな」
そうシドは頷いた後、
「でも、守れたんじゃないのか? という思考が巡って……」
「シドさん!!! あなたがそんなんだと、次の時に守れないじゃないですか。私はそんな貴方は見たくないのですよ……」
「ああ、すまん」
「まあ、貴方がそれは私が困りますからね」
「……」
そして二人は次の目的地に行く。だが、魔物も二人が移動するたびに、着いて来ている。
竜が必死に飛ぶ度、魔物も着いて来ている。というよりは、下の世界が魔物に覆われているみたいな感じだ。
「どうしよう」
「ああ、一体どうなっているんだ。これは」
竜の体力もいつかは切れる。これでは、持たないはずだ。
その時が来た時にいかに魔物から逃げればいいのだろうか。
その解を二人は求められてはいない。
そしてあっという間にその時が来てしまった。竜の体力が切れてしまったのだ。その瞬間に二人は舌の世界に落ちてしまった。
そしてその瞬間に魔物達が目の色を変えたように向かってくる。
そして二人はひたすらに魔物を攻撃して言っている。だが、数は減らない。その瞬間に、
「こっち!」
そう声がした。二人はそのままその方向に行った。地面の下の基地に。
「大丈夫か?」
そう、下にいた筋肉ムキムキの男が言った。
「俺はロリゲル。レームの総隊長だ」
「私は、ゲール ラーレイ レームの3番隊隊長よ」
そう、その場にいた主要人物と思われる二人が言った。
「ん? 待ってよ。なんでレームの軍隊がここにいるんだ?」
シドはそう呟いた。レームの軍がここにいるという事は。
「レームは滅びた。魔物達の手によってあっという間に……」
「そうか……」
目的地はすでに滅びている。その情報は二人を絶望させるのに、余裕なものだった
レームなら、アナの性質を何とか出来ると思ったのだが、それはちあぐかった。
次はどうすればいい、次は何をすればいい。し度たちにはわから無くなっていた。
ロリゲルに話を聞いたが、その抵抗運動とは名ばかりで、魔物がいない時間帯に外にこっそり出て、食料を集めるだけらしい。
つまり、このレーム軍残軍に大した力は残っていない。シドは夜中にアナに語り掛ける。
「これからどうする?」
「どうすると、言われましても……」
この非常事態、アナには全く思考が追い付いていなかった。
「僕は、大本を叩くのが一番だと思っている。おそらくゾルティアだ。奴はまだ生きていて、本格的に世界征服を始めたんだ」
「……」
「奴の居場所は代々つかんでいる。アナ、お前はどうしたい?」
「どうしたい……私は皆を救いたいです。シドさんもすべてを」
「分かった。じゃあ、ゾルティアを倒そう!」
そしてシドはそのことをロリゲル達に話した。これからシドたちが行おうとしていることを。
それを伝えると、ロリゲル、神妙な顔をして、「そんなのは無理だ。俺たちは見てきた、奴らの恐ろしさを。お前でも絶対に勝てない」
そう伝えた。その言葉からは、完全にゾルティアに勝つという可能性を捨てているとシドは感じた。
もはや敗者は敗者らしく、逃げまくろうと思っているなとも。
だが、だからこそシドはその言葉に心底イラついた。
この場の食料もいつか尽きるだろう。
その時にこの人たちはどうしようというのか。
「お前たちは、民を救おうとは思わないのか。今の状況を打破しようとは思わないのか。……アナ行くぞ」
「は、はい」
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