家族の絆とリミッター解除5

「アリーシャは小さいのに本当に凄いねぇ」

お兄様は満面の笑みを浮かべる。


「アリーシャの村の運営が上手くいったら、他の場所でも試してみるのもいいかもしれないわね」


「そうですね。水車が立てられない場所は、風の吹き具合を計算しなければなりませんが、風車を作るものいいですね」

お母様の言葉に頷いて、次の提案をそっと付け加える。


「土地の立地条件や地質調査などを先に何ヶ所か行っておきましょう」

侍従長の言葉に皆頷いた。


「領地が豊かになり領民達の生活が安定すれば、この辺境伯領も王都に負けないぐらいの活気を取り戻すと思います」

隣国と接していていつも緊張状態の我が領地、その上魔獣も出ると言うことで、領民達には苦労をかけてしまっている。

それをどうにか出来ないかと、始めたのが水車。

すぐにどうにか出来る問題では無いけれど、少しづつでも良好に向かっていってほしいんだ。

それに、ズルかも知れないけれど、私の授かった力も有用していけたらと今は思ってる。

だから、その為にはお父様達に伝えなきゃいけない。


「うちの娘は領地思いだね」

ニヤケ顔のお父様を真っ直ぐに見つめた。


「お父様、折り入って話したい事があります、人払いをお願いします」


「……わかった。皆、少し席を外してくれるか」

家族以外にそう告げると、お父様は顔を引きしめた。


「「「かしこまりました」」」

侍従長やキャサリン達が一礼すると部屋から出ていく。


「部屋の見張りの騎士にも休暇を取るように伝えてくれ。今から1時間は執務室の周囲に誰も近づかないようにと周知を頼む」


「そのように手配いたします」

お父様の言葉に侍従長は頷くと、最後に部屋を出ていった。

ドアが閉められ家族だけになった執務室は、やけに静かに思えた。


「アリーシャ、君がずっと1人で抱え込んでいたモノを私達にも教えてくれるかい?」

お父様の言葉に、私が秘密を抱えていた事を家族が知っていたのだと気づく。


「アリーシャが話してくれるまで待とうと皆で決めていたの。だから、何を聞いても驚かないわ。だから安心して話してちょうだい」

お母様の言葉に胸が詰まった。

皆、待っててくれたんだ。

私が決断するその時を……。


「これから話す事は荒唐無稽な話だと思いますが。私は3歳の時にベビーベッドから落ちて頭を打った事を覚えていますか?」

震える声を抑えるようにして話し出す。


「ええ。ジオルドとシルバートが大騒ぎして大変だったわね」

その時の光景を思い出したのかお母様はくすくす笑う。


「あの日、目覚めた時に、ここでは無い地球と言う世界の日本という国で生きていた女子高生だった記憶が蘇りました」

そう言って両手を膝に乗せ俯いた。


「女子高生が何かは分からないが、転生の記憶が蘇ったのだね?」

お父様が転生って言葉を知っている事に驚いた。


「この世界には稀に転生の記憶を持つの者が生まれる事があるのよ。そうね、記録に残っているのは100年前かしら」


「100年前にも転生者が居たんだ……」

思いもよらなかった事実に慌てたお母様の顔を見た。


「そうよ。だから、貴方が転生者だとしても不思議はないの」

だからそう身構えないで、と優しく頭を撫でてくれた。



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