家族の絆とリミッター解除3


騎士の1人に手伝ってもらい馬車を降りたお母様もやってくる。

ドレスではなく騎士服を着たお母様、かっこいい。


「アリーシャ」


「お母様」

お兄様の腕から抜け出しお母様に駆け寄ると優しく抱き上げてくれるお母様の首にしがみついた。

お母様の温もりに、今まで我慢していた涙がぶわっと溢れた。


「あらあら、しっかりしていてもまだ泣き虫さんね」

ポンポンと背中を叩いてあやしてくれるお母様に、我慢していた寂しさが滲み出た。


「騎士団整列!」

お父様の号令に視察に出ていた騎士団員が整列する。


「春と討伐を無事に終え、1人も欠けることなくここに集えた事を嬉しく思う。皆、ご苦労だった」


「「「いえっさ」」」


「視察に赴いたメンバーは明日より一週間の休暇とする。 息抜きは良いが、騎士としての襟元を忘れず羽目を外しすぎぬ事。解散!」


「「「お疲れ様でした」」」

一糸乱れぬ動作で頭を下げた騎士団。

お父様が背中を向け私達の方に歩き始めると、緊張を解いた騎士達が思い思いに動き始めた。


「さぁ、私達も行きましょう」


「ああ」

お母様とお父様は微笑み合う。

家族4人で玄関へと進むと、両端にメイドや侍従者たちが整列していた。


「お帰りなさいませ。旦那様、奥様、お坊ちゃま」

セバステンが代表してそう言って頭を下げると、


「「「お帰りなさいませ」」」

その場にいた全員が綺麗に頭を下げた。


「ああ、今戻った。留守をしっかり守ってくれて感謝する」


「旦那様、勿体ないお言葉でございます。入浴の準備と軽食の用意をしておりますので、先ずは旅の疲れを落としてください」

セバステンは、お父様に近寄るとお父様の兜を受け取り頭を下げる。


「そうさせてもらおう。皆もそうしよう」

うむと頷いて私達の方へと視線を向ける。


「ええ、そうでございますね」


「わかりました、お父様」

お母様とお兄様は頷く。


「お母様、下ろしてくださいませ」

私は入浴する必要もないので、別待機だね。


「久しぶりに一緒にお風呂にはいらない?」


「はい。お母様お一人の方が疲れが取れると思います」

お母様の魅力的な誘いを断る。

疲れてるのに私までいたら、ゆっくり出来ないもんね。


「あら、お姉さんになったわね」


「私はもうお姉さんですよ」

くすくす笑うお母様に、胸を張った。


「お父様、ご報告したい事があるので、お時間の取れる時にお話聞いてもらいたいです」

お父様を見上げる。


「もちろんだ。水車の事もアリーシャの村の事も報告は聞いているが、アリーシャから詳しく話してもらいたい」


「はい」

それだけじゃ、ないんだけどねぇ。

きっと、もっと驚くお話を伝えないといけないんだよ。


「お母様にもお兄様にも聞いてもらいたいので、よろしくお願いします」

会釈して私はキャサリンの元へと駆け寄った。

そんな私の後ろ姿を微笑ましげに見守っていた家族が、度肝の抜かれる瞬間まで後数時間。



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