読了:SAVE THE CATの法則(ブレイク・スナイダー)

 二か月半ずっと病床にあって、蟻以下の人間性で生きていた。

 だが、根性で本を一冊読み切ったのである。


 ブレイク・スナイダー著、SAVE THE CATの法則。

 脚本作りの指南書として有名で、その分かりやすさから文芸初心者にもよくお勧めされている名著だ。


 普通なら三時間程度でぱっと読めてしまう内容なのだが、私は図書館から借りた最初のひと月で読み切れず、一か月の間が空いて、再び貸し出されてようやく読み切った。

 三日後には返却しなければいけない。


 感想を書きたいのだが、内容は全て金科玉条であり、学んだことを書きだしたらえらい長文になってしまう。

 なので、ここではワン・センテンスだけ言及しよう。


 ……何を書くかな(本のページをめくる)


[抜粋]

 ”逆にやってはけないこと ^脚本コンクール”

「脚本コンクールは、はっきり言って時間の無駄だ。確かに最近の流行ではある。コンクールの結果に一喜一憂したり、自分が上位10%に入っているか――それにどんな意味が有るんだか分からないが――心配で電話や郵便が来るのをやきもきして待っている脚本家が大勢いる。そういう諸君に対して、一言。そんなのやめとけ。

(中略)

 コンクールの要網をよく読んで、レベルの高い審査員がいるか、コンクールの跡にもきちんとした座談会やセミナーがあるものを選びなさい」

[以上]


 丁度カクヨムコンテスト11が開催中だ。

 この話題にしよう。


 前提として、シュナイダー氏の論は映画脚本に関するものであり、小説について記したものではない。

 だが、昨今の「小説」の扱いたるや、完全にアニメの「元ネタ脚本」である。

 そういう環境から見てもSAVE THE CATの法則は実に「小説向き」であることが理解して頂けると思う。


 それで、なんで「コンクールはやめとけ」を選ぶんだということだ。

 曰く、カクヨムだけでなく、コンテストに入賞すれば賞金がもらえるし、アニメ化だってしてもらえる!

 可愛い恋人もできて嫁(夫)を貰って、自分の赤ちゃんを手に抱いて、親からは生まれてきてくれてよかったと泣いて喜ばれる。

 そいて、気が向いたときに執筆してまた金を稼げばいい。

 まさに、これまでの苦痛に満ちた人生が、ようやく報われて本当の自分が花開くのではないか!


 だから、やめとけってんである。

 少なくとも「書きたいから書く人」には辛いことだ。


 知っての通り、現在のコンテストは中間審査が「読者選考」だ。

 一定のPV数に達していなかったり、中間時点で割合の上位に入っていなければその時点で落第になる。

 最近は問題視する声に応じるふりをして色々変更はしているが、問題の根っこは変わらない。


 つまり、これらのコンテストは「既に人気になった作品を売る」ための機構であり、「面白い作品」「腕のある作家」を見つけて、さらに発展させて行こうという物じゃない。

 必要なのはSNSのフォロワー数や流行りをなぞったなんとなくそれっぽい文章であり、貴方の血がしみ込んだ「作品」ではないのだ。

 売れる作品であることは前提として、しかしそこにひとしずくでも「自分らしいもの」を加えたい、感じてほしいという人よ。

 止めなさい。ここ(コンテスト)はあなたの居場所じゃない。

 自分から「金の卵の目玉焼き」になりたいというのであれば止めないけどね。


「報奨金やアニメ化については?」

 そう思う人は当然いるよな。

 だが、ブレイク・スナイダー氏が示した「価値あるコンクール」の報酬とは、そこで培った人脈や勉強を元手にして、「買ってもらえる脚本を作り続ける」ことである。


 ここで急に今日のエンターテイメント事情を持ち出すことを謝ります。

 金が欲しければAIで大量生成してバラまいてリワードを稼げばいいし、アニメにしたければ、ちょっと手は込むが、AIツールで個人製作するか、そのようなサービスを運営しているエージェントに委託すればいい。

 どっちも誰にだって出来る。

 ストレスをためてコンテストにかける理由なんかこれぽっちもない。


 まあ、コンテストに出す出さないが無関係であるなら、別に参加したって何の問題も無いのはその通りだ。

 ただ、あれだ。

 そういう世間一般での名誉を受けて、金もパートナーも手に入って、我慢して生きてきた甲斐があったって、ちょっとでも満足した人は……


 その後も、創り続けているか?


 あなたの高校時代からずっと仲がいい友達で、パートナーと一緒になって子供の成長を担う「役」になった人は、まだ若人みたいに「自分らしいことをやりたい」と言い続けているか?


 人間、そこそこ満たされてしまったり、逆に苦痛以外に持つものが無くなると、訓練して自分を成長させて、「自分らしい」を表現する事とかどうでも良くなる――いや、はっきりと「くだらない」と言えるようになるのだ。

 昔はあんなに楽しそうに話し合っていたのに。


 これでまとめだ。

「自分が書きたいものを書く人」は”コンクールなんてやめとけ”だ。

 今日日、コンテストは審査がいい加減だし、報酬は別の手段でもっと効率よく手に入る。

 お祭りに参加したいというのであれば私も同じ気持ちだ、是非そうしよう。

 だが、コンテストに入賞して本物の作家になって人生をつかみ取るんだ、という人には向いてないだろう。

 君に必要なのはコンテスト入賞というバッチではなく、「いつまでも創り続ける呆れた精神」だ。


「SAVE THE CATの法則」で、ブレイク・スナイダー氏は終章をこう結んでいる。

 ”なるようにしかならない”


 やれるだけのことをやりつくしたら、結局最後は「お金持ち」の気分次第だ。

 ひとつのコンテストなんかに毎年毎年、命を燃やさなくてもいい。

 ただひとつ決められることと言えば、自分の手で創り続けることだけなんだから。


 さあ、いい感じにまとまったのではないだろうか。

 うん?

「受賞パーティーで作家先生に対面できるのが嬉しい」

 それはその通り!

 私だって羨ましいさ!

 そういうことなら、いざカクヨムコンテストに挑もうじゃあないか。


 まあ私の場合、そのためには先ず布団から上がれるようにしなきゃいけないな。


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