能力「遮断」――資料に見る異能の特性

《遮断》:対象との連続性を断絶する能力。物理的接触、感覚的認識、あるいは存在そのものを遮断することが可能とされる。ただし、複数の遮断は同時に成立せず、一つを維持する場合、他の遮断は行えない。

———都市安全保障局・能力研究課 内部資料より(資料番号:ASB-2047-β)


補足:同課が過去に行った都市防衛シミュレーションでは、遮断ひとつで銃火器・魔法兵装の大半が無効化され、局地的には一人で小隊規模の殲滅力を持つと評価されている。

[編集部注:シミュレーション報告は2003年に廃止されたが、一部は外部流出した記録と一致している]


つまり理論上、彼は「都市を一人で防ぐ力」を備えていた。

だが、彼はそれを一度も誇示せず、自己顕示のために振るうこともなかった。


能力研究課の課長・佐伯信一氏は次のように語る。


「理論上は非常に強力で、戦闘にも防御にも応用可能です。しかし彼は一貫して《自分の気配》を遮断し続けた。これは戦術的な選択ではなく、哲学に近い決断でしょう。誰にも気づかれずに人を助けることを、自らの在り方として選んだのだと思います」


佐伯氏はこうも付け加えた。


「もし彼がその力を攻撃に振るったならば、国家規模の脅威になっていたかもしれない。けれど彼は徹底してそれを拒んだ。『遮断』は、他者を黙らせる力ではなく、誰かを泣かせないための力であると信じていたのでしょう」

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