2ゲーム お兄さん、勝たせてくれたらヤラせてあげるよ?

 俺は三度目のデビデビタワーのエントランスにいた。


 取り敢えず一旦気分を落ち着かせよう。そう思ってエントランス内にあるカフェで軽食を取る事にした。


 この世界のお金は神様からもらっていたので気にすることなく頼んだ。


 二回死んだからか、ガッツリ食べたかった。メガジャンボパフェとバクバクモリモリカレーを頼む事にした。


 そして、エッフェル塔並のパフェとエメラルドマウンテン並のカレーを爆速で食べた。


 あっという間に完食して、水を飲みながら俺は考えた。


 この世界はおかしい。ルールがめちゃくちゃだ。流浪系のおじさんだったら納得はいったが、主人公の獅子脅神が禁止カードを使うのはさすがに驚いた。


 俺は改めてスマホで『デビル』というカードゲームを調べた。


 すると、AIの検索結果にこんな事が書かれていた。


『デビルというは勝つためなら何でもありというルール無用のカードゲームです』


 嘘でしょ。ルールないの。アニメだから? いや、でも、アニメを見た限りではそんな感じはなかったはずだけど......。


 うーん、これからどうしよう。もう普通にカードゲームするのやめようかな。


 なんて考えていた時だった。


「お兄さん」


 俺の近くから甘い声が聞こえた。それと同時にフワッと花が舞ったような香りも聞こえていた。


 チラッと見てみると、目鼻立ちの良い女性が俺の方を見ていた。金髪にグレーのメッシュ、指先しか出てないユルユルのセーターを着ていた。


 俺はそれを見てピンと来た。猫雑魚ねこじゃこだ。


 この子は確か獅子脅神が通っている学校の同級生で、ヒロインの友達という立ち位置だった。


 なぜ彼女が俺に声をかけてきたのか謎だが、知っている人物に会えるのは嬉しい。


「何ですか?」

「今って時間ある?」

「えぇ、ありますけど......なぜですか?」

「よかったら......バトルしません?」

「え?」


 俺は困惑した。甦って早々、また死ぬようなバトルはごめんだ。


 でも、相手は猫雑魚。カードは確か......いや、そもそもバトルするようなキャラだっただろうか。


 俺は首を傾げていると、猫雑魚は声を潜めた。


「もし勝ったら......してもいいですよ」

「え? 何を?」

「......エッチなこと」


 俺は自分の耳を疑った。こいつは何を考えているのだろう。


 もし俺が勝ったらヤラセてあげる? そんな淫乱なキャラだったっけ?


「いや、お断りします」

「えぇ~? いいじゃん。いいじゃん。やろーよ!」


 猫雑魚はそう言いながら俺の隣に座ると、これみよがしに身体をくっつけた。腕や脚に彼女の軟らかい身体があたり、俺の理性はたちまち揺らいだ。


 どうしよう。俺は彼女の誘いを受ければいいのだろうか。


 いや、駄目だ。これは何かの罠だ。絶対に何かあるはず。


 俺はそう思って再び断ろうとした。


 が、俺はつい彼女の谷間を見てしまった。かなり深そうだった。この谷に顔を埋める光景を想像してしまった。


「受けます」


 俺はそう言うと、猫雑魚は「やったーーー!! ありがと!」と言ってウインクした。


「でも、負けたらお金ちょうだい」


 俺はようやく彼女の目的に気づいた。こいつ、カードゲームでパパ活している。



 場所は路地裏だった。人の気配も感じられず、近くにはATMとラブホテルがあった。勝敗には持ってこいの場所だ。


「さぁ、始めよう」


 俺は襲いかかる欲望を押さえつけながらどうにか彼女の正面に立った。猫雑魚は「いいよ~!」と軽い口調でデッキを取り出した。


 じゃんけんをした結果、俺は先行だった。


 よし、ようやくカードゲームができるぞ。


「俺のターン!」


 俺はそう言ってカードを一枚引いた。出てきたのは『悪魔の兵士』だった。なかなか強いカードを引いた。


「悪魔の兵士、召還!」


 俺は悪魔の兵士を猫雑魚の前に出した。悪魔の兵士は角とシッポが生えた奴で一度に二回攻撃できる。


 よし、このまま攻撃をすれば相手に相当なダメージを与える。


 ちなみに相手の命ポイントは一万。悪魔の兵士の攻撃力は二千五百。二回攻撃すれば五千になるから半分くらい命を減らせる。


 本当は攻撃を開始するのは後攻だけど、この世界にルールはないからいいや。


「悪魔の兵士で二回攻撃!!」


 俺はそう叫んだ。


「デッキから魔術カード発動!」


 すると、猫雑魚は声を高く上げた。


 デッキから魔術カード? 普通は手札のはずなのに......まぁ、何でもありだからいっか。


「魔術カードねぇ......何を出すんですか?」

「そうね......あなたも含めて喜ぶものよ」


 猫雑魚はそう言ってビシッと指差した。


「魔術カード『淫乱本』を発動! このカードは相手の悪魔がオスだった場合、このカードを付与させる。すると、前立硬直により攻撃ができなくなる!」


 な、なんだと?! 淫乱本?!


 彼女の前にモザイク必須の表紙が特徴の本が現れた。それを悪魔の兵士が受け取った。すると、彼は本を見開いた瞬間、前屈みになってしまった。


 あぁ、オス特有の生理現象により悪魔の兵士は攻撃できなくなってしまった。


 なんて淫らなデッキなんだ。けど、俺は満足感があった。ようやくバトルしているって感じがしてきた。


 よし、ここで俺が言いたかった台詞を言おう。


「お前......なかなかやるじゃないか」


 俺がそう言うと、猫雑魚は「まだよ」と言ってデッキから魔術カードを取り出した。


「魔術カード『淫乱ドリンク』! これを相手に飲ませ前立硬直させ、プレイできなくさせる!」


 なんだと?! そんなカードもあるのか。


 俺の目の前に一本の栄養ドリンクが現れた。非常に飲みたくなかったが、カードの力により無理やり開けて飲んでしまった。


 すると、俺の全身の血液が駆け巡り、前立硬直してしまった。


「あ、ぐ、は......」

「アハハハハ!! どう? 降参した方がいいわよ!」


 猫雑魚の声が路地裏に響き渡った。俺は激しく痛むズボンを抑えながら考えた。


 どうする。どうすればいい? どうすれば勝てることができる。


 その瞬間、俺はあるカードの存在を思い出した。


 合体カード......このカードは悪魔同士を合体させてさらに強力な悪魔を召還させる。


 けど、もしその合体を別の意味に置き換える事ができたら? たとえば......俺と猫雑魚を......いや、さすがにそれは倫理的にアウトだ。


 いや、負ければ多額の金を払うことになる。でも、色々とプライドが......。


 いや、もう限界だ! 発動させる!


「お、俺も......デッキから魔術カードを発動! 『合体カード』!」

「え? なにそのカード?」


 驚くのも無理はない。そのカードはこの世に存在しないからな。この世界では、か。


「このカードはどんな相手でも合体することができるカードだ? お、俺は猫雑魚と合体する!!」

「え? 合体ってそういう......きゃあああああああああ!!」


 俺は凄まじい勢いで猫雑魚と合体し、心行くまで楽しんだ。


 ちなみにこれが俺の初体験だった。

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