第4話 殺し屋

​ サンフランシスコの夜景を背景に、俺は志鷹からの電話を切った。ミニストップの小さな事件が、志鷹建設の巨大な不正を暴く決定的な証拠、すなわち「金庫」へと繋がった。すべてが解決に向かうように見えた。

​ しかし、その安堵は一瞬にして打ち砕かれた。

​数分後、再びスマホが震える。志鷹からだ。さっきとは打って変わって、彼の声は震えていた。

​「おい、聞いてくれ……。金庫から、もう一つとんでもないものが出てきた」

​ 俺の胸に、嫌な予感が走った。

​「なんだ?」

​「鳩崎支店長と、志鷹建設の社長とのやり取りを記録したボイスレコーダーだ。データは暗号化されていたが、専門のチームがすぐに復号した。そこに記録されていたのは、単なる不正の相談なんかじゃない。殺し屋の依頼の会話だった」

​ 俺は言葉を失った。

​「誰を…?」

​「あの内引きをしていた作業員だ。彼が借金返済に苦しみ、警察に事情を話すのではないかと恐れたようだ。鳩崎支店長が、『どうせなら消してしまえ』と社長に提案していた。社長も躊躇なく、『誰に頼む?』と尋ねていた」

​ サンフランシスコの夜風が、急に冷たくなったように感じられた。たった一つの小さな事件が、人間の命を奪う計画にまで発展していたとは。

​「その、殺し屋の正体は?」

​「まだそこまでは…だが、志鷹建設の金庫には、怪しい人物の写真と、海外の口座の振り込み記録もあった。おそらく、これが報酬だ。しかも、その人物の顔には、蛙に似たタトゥーがあったんだ。署内で見た気がする」

​ 志鷹の言葉は、俺の知っている世界を揺さぶった。警察官が殺し屋? まさか。

​「まさか、本物の警察官が…?」

​「いや、違う。この男は、過去に警察を名乗る詐欺事件で捕まっている。偽の警察手帳を作って、一般市民を脅迫していた。どうやら、その時に得た情報を、今回の殺しに利用していた可能性がある。だが、俺たちの知る限り、彼は日本にいないはずだ。それがなぜ…」

​ 話は複雑になっていく。俺はただ、志鷹が今、巨大な悪意と対峙していることを感じていた。そして、その背後には、まだ見ぬ闇が潜んでいる。

​「その男は、今どこにいるんだ?」

​ 俺は震える声で尋ねた。志鷹の「コンビニ刑事」としての戦いは、まだ終わっていなかった。いや、これからが本番なのかもしれない。


 《登場人物》

 ​俺(語り手)

​ サンフランシスコを旅行中の人物。日本にいる幼馴染の刑事、志鷹から電話で事件の進展を聞き、その意外な展開に驚きと不安を覚えています。

 志鷹

​ 語り手の幼馴染で、「コンビニ刑事」の異名を持つ刑事。志鷹建設の不正を暴く決定的な証拠「金庫」を発見しますが、その中からさらに衝撃的な事実、殺害計画のボイスレコーダーを発見します。犯行を企てた人物や、その実行犯とみられる謎の男の正体を探る中で、新たな危険に直面します。

 鳩崎

 ​東和銀行の支店長。志鷹建設の社長と共に、内引きをした現場作業員の殺害を計画していたことがボイスレコーダーの会話から判明しました。

 志鷹建設の社長

 ​鳩崎支店長と共謀し、自社の不正を隠蔽するため、現場作業員の殺害を計画していました。ボイスレコーダーの記録から、彼が殺害依頼に躊躇がなかったことが分かります。

 現場作業員

​ 志鷹建設のマンション建設現場で働いていた人物。ミニストップでの内引き事件を起こしましたが、不正の口封じのために殺害計画のターゲットとされていたことが判明します。

 謎の男

​ 志鷹建設の金庫に残されていた写真に写っていた人物。顔に蛙に似たタトゥーがあり、海外の口座に振り込まれた報酬の受取人である可能性が高いです。過去に警察を騙る詐欺事件を起こしており、警察官ではないものの、そのときの経験を活かして今回の殺害に関与していると推測されています。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る