人助け

「うへぇ……」


 ダメージがあまりに深い。

 ただ飛んできた小石を腹に受けただけが致命傷になってしまった僕はふらふらになりながら森林を進んでいく。


「……またか」


 そしてしばらく歩いた先で僕はまた、黒髪赤眼の女性へと出くわした。


「……くっ」


「この程度なのですか?王立の騎士というのは」


 ただし、今度の黒髪赤眼の女性は一人でいるのではなく、鎧を身に纏う金髪碧眼の女性と戦っている所ではあったが。

 第二、第三村人と同時に接触である。


「触手ブンブンじゃないのね」


 黒髪赤眼と金髪碧眼。二人の女性が同じ剣を持ち、ぶつかり合っているところをボケーッと眺めながら、自分が割り込めるタイミングを探る。

 

「あのー、どっちか僕と友好的な人います?」


「……!?」


「な、何!?」


 両者共にそんな速い動きで動いているわけではない。

 無理やり割り込めると判断した僕はゴーレムを差し向け、二人の動きに割って入る。


「何やつ!?」


「こ、子供!?危険ですっ!ここから離れて!」


 僕を見て黒髪赤眼の女性はこちらへと敵意を向け、金髪碧眼の人は僕を子供と見て逃げるように声をかける。

 突如として現れたゴーレムの召喚主を僕と認識していない様子かな?


「まぁ、傾向と対策的にそっちが一旦怪しそうよね?」


 というか何なら、僕のような小さな人間に意識を向け、割って入ったゴーレムへの警戒心が少し緩んでいる。


「んなぁ!?」


「あら?さっきの人より反応速度が遅いし、抵抗力も弱いな?」

 

 あの触手ブンブン、結構強い部類だったのかも。

 そんなことを考えながら僕は剣を持っている黒髪赤眼の人を割って入らせたゴーレムで封印しにかかっていく。


「いっちょ上がり」


 触手ブンブンと違い、速攻で封印が完了した。


「さて、と。貴方は僕と友好的に会話してくれますかね?」


 後に残ったのは金髪碧眼の女性が一人だけだった。


「え、えっと……助かりまし、た?」


「えぇ、助けましたよ?」


「ありがとうございます。まだ、幼いのに強いのですね」


「……僕のことを何歳だと思っているのか気になるところだね」


 まぁ、そこは一旦置いていこう。


「僕はアレン。ただの旅人さ。貴方は?」

 

「ハッ!私はイースクラ王国近衛騎士団所属、アイル・ユスティアにございます」


「あぁ、騎士さんか……まぁ、見ての通り僕はただの旅人。ちょいと休めるところを探しているんだけど……?」


「貴方は命の恩人です。アレン様さえよろしければ、私の屋敷にまでご招待いたします」


「へへっ、助かるね」


 僕の乗る雲は最大限の酔い止め対策をしている。

 だが、完全にゼロとすることはできなかった。太陽の下、僅かに揺れている雲の上に乗っている僕はあの触手ブンブンと戦うよりも前に限界が近づいていた。

 そこに小石が一発。

 僕の貧弱な体は既に限界を迎えていた。


「では、命の恩人を是非とも丁重に扱ってくださいね?この雲は押していけるので……では、おやすみなさい」


 いやはや、ここで僕のことを引き取ってくれるらしい人に出会えてよかったね。本当に幸運だった。


「えぇぇぇえええええええええええ!?」


 僕の護衛の為、常に控えさせている無意識化でも動くゴーレム五体。

 その数を倍の十体に増やし、何があっても問題ないようにした上で僕は意識を手放すのだった。

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