魔法
魔法とは何か。
一言で無理やり言うのであれば、世界に存在する生命であれば誰もが持っている魔力でもって世界の理に干渉し、通常の物理法則化では本来起きない現象を引き起こす奇跡のことを指す。
「となれば、これは小さな世界創造だな」
僕は自分で作ったゴーレムを叩きながらそうつぶやく。
魔法とはこの世界の理への干渉であり、魔法によって世界そのものが変化する。だが、この魔法による変化の範囲はごくわずかな範囲だけであり、また、世界の理を一時的に歪めるだけで、永続的な改変は不可能である。
それが魔法の基礎だ。
だが、この村の人間であれば当たり前のように使っているゴーレムは特別。本来は不可能である永続的な改変を可能にする産物であった。
己が作ったゴーレム内部を世界とは別の異なる空間と定義することでその内部で引き起こされる魔法を永続的なものとするのだ。
例えば、僕が今、自分の手元に持っているこのゴーレムの内部には空間拡張の魔法が込められている。そのおかげで何でもかんでも収納できる便利道具となっている。
このゴーレムの中には僕がこれまで作ってきたゴーレムたちが収納されている。
僕がすべての本を読み終えたのは六歳になってから半年後。
実際に魔法をお父さんから教えてもらったのが一か月前。僕はこの一か月でゴーレム作成の魔法を学び、実際に三つのゴーレムをこれまで作成してきていた。
「まったくそんなずっとゴーレムを弄っていて何が楽しんだ!」
新しくゴーレムを作ろうと鉱鉱石を手に取った僕の前に座っているイリスが不満げに声を上げる。
「大事だよ?魔力は使えば使うほど強く、また量も多くなっていく。そして、このゴーレムは魔力強化にぴったりだ」
僕たちの住む村はとある鉱山の前にある。
その鉱山より採れる魔鉱石からゴーレムは作られる。この魔鉱石にたんまりと込められている魔力に触れることは自分の魔力を引き上げるのに一役も二役も買ってくれる。
僕は魔法を極めたいのだ。
ならば、その根幹となる魔力の量を増やそうと努力するのは自然の摂理。
「魔力は大事だよ?魔力がなければ魔法は発動できないからね。それに、魔力がなければ魔法の反動が大変なことになるからね」
魔法は世界の理を変える行い。
その変換には代償が伴う。、歪めすぎれば反発が生じ、術者に反動が襲いかかってくるのだ。
魔法を極める道というのは自分がこれから改変しようとしている世界の理はどのようなものをまず知ること。そして、魔力で何処まで変換できるのかを知ること。反動を如何に少なくできるか、使用する魔力の量を減らせるかが鍵となってくる。
「僕はこの反動が割と本気でシャレにならないから。この魔力が大事なんだよ……反動を出すわけにいかないからね。反動は魔力で防ぐことが出来る。防ぎ切れるほどの魔力がなかったり、そもそも完璧に防ぐ術を持てないくらいに魔力の制御が甘かったりしたら終わりだ。僕の場合は特にね」
僕は生まれつき、他の人より体内に有している魔力の量が多い代わりに非常に体が弱く、病弱だった。
体の方に影響がある反動を食らうとひとたまりもない。
「ふぅーん」
熱く語る僕の言葉をイリスは軽く流す。
クソッ!何で魔法のある世界で生まれておきながらこんなにもイリスは魔法に対して興味なさげなんだ!?魔法は結構何でも出来るんだぞ!
「امنح الحياة للحديد」
つまらなそうにしているイリスに怒りを抱きながらも僕は詠唱を唱え、魔力の線でもって魔法陣を空に描く。
この詠唱と魔法陣は魔力でもって世界の理を干渉するのに使用するツールだ。
魔力はそれ単体だとただのエネルギー源でしかない。まぁ、これはこれでエネルギー砲として攻撃に使ったり、身体の強化に使ったりできて便利なのだけど、それは一旦置いておいて。
魔力はそれ単体だと大した意味をなさない。詠唱を魔法陣を用いることで魔法という明確な奇跡をこの世界に発露させるのだ。
「ねぇねぇ!そのキラキラとしたので空に何か描いているじゃん?」
ゴーレムを作る為に魔法の発動を始めた僕へとイリスはいつもと同じ元気な声を投げかけてくる。
「魔法陣ね?」
「それで私の似顔絵描きながら魔法発動させてよ!」
「はい?いや、出来るわけないでしょ。魔法陣は魔法を起こす核。しっかりと決められた形があって……」
そんな彼女がやってと懇願してきたお願い事に対し、僕は出来ないと答える。
「なぁーんだ出来ないんだ」
そんな僕の言葉を聞いたイリスはつまらなそうな、期待外れとでも言うような表情で落胆の声を漏らした。
「……はぁ?できるしぃ?」
それは、その仕草は、僕の心に火をつけた。
この世界の奇跡に対し、魔法に対し、そんな感情を見せるなど……許せない!たとえ、それが子供の我儘から来るものであったとしても!
「え!?ほんと!ならやってみせてよ!」
「やってやるさー!」
イリスの似顔絵で魔法が成り立つような魔法陣を今、組み立てればいいのだ。小さな魔法陣を大量に描けば多分それっぽく……。
イリスの無茶ぶりに答えるべく、僕は頭をフル回転させながら魔法陣を描いていった。
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