ミステリアス・オン・ザ……

式崎 花菜恵(しきさき・かなえ)

第1話

 端下駄太壱はしげた・たいちはリアルでは中二病をこじらせて2036年9月現在不登校だ。ちなみに彼は高校1年生で、デビューに失敗したうちの一人。

 そんな彼のことは、初め、彼の両親は酷く心配したが、ここ1年では気にかけなくなった。

 なので、太壱も気が楽になって拡張現実へダイブすることにした。

 ダイブして初めての任命は、防衛大臣になることだった。

 その後は大佐として、宇宙戦艦に乗り込み、友好国ロシアとともに、地球人を守るため金星人と戦っていた。

 そうなのだ、拡張現実内ではロシアと日本は友好条約を結んでいるのである。

 リアルで朝食を済ませ、トイレも済ませてからいざ拡張現実にダイブし、防衛大臣として働く太壱。

 リアルでは午前8時すぎ。拡張現実内も午前8時。

 リアルも拡張現実内も、時刻は同じなのだ。

「皆、おはようございます」

 部下たち全員があいさつを返してくれた。

「第一艦隊の修繕は今日の朝6時には完了しているはずだが?」

 部下の一人、一梓杏いちあずさ・あんずが答える。

「はい‼ 既に完了しております」

「報告ありがとう、一梓中佐‼ 今日のポニーテールも可愛いよ‼ 第1次作戦は上手くいっているか?」

 今度はもう一人の部下、フランチェスカ少佐が答える。

「はい‼ こちらも完了しております。作戦は成功しました。敵の金星人はこちらには気付いておりません」

「部分的にセクハラ発言がありましたよ、大臣。今後はお控えください‼」

 太壱は大臣席に腰掛けながら返答する。

「そうか。ならば第二次作戦を進めよう」

「こちらの話を聴いていますか、大臣?!」

 一梓が抗議していると、防衛大臣の斜め下の横のドアが開いた。

 丸刈り頭の大柄の男が白衣姿で現れた。

 太壱はすぐに気付いた。

「これはこれはポートレフカ大佐。どうなさったのです?」

「あなたに頼みたいことがあってね。是非引き受けていただきたいのだが、先ずは詳しく説明させてほしい。お時間はあるかな?」

 太壱はニヤリと笑った。

「勿論、ありますとも」


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