ミステリアス・オン・ザ……
式崎 花菜恵(しきさき・かなえ)
第1話
そんな彼のことは、初め、彼の両親は酷く心配したが、ここ1年では気にかけなくなった。
なので、太壱も気が楽になって拡張現実へダイブすることにした。
ダイブして初めての任命は、防衛大臣になることだった。
その後は大佐として、宇宙戦艦に乗り込み、友好国ロシアとともに、地球人を守るため金星人と戦っていた。
そうなのだ、拡張現実内ではロシアと日本は友好条約を結んでいるのである。
リアルで朝食を済ませ、トイレも済ませてからいざ拡張現実にダイブし、防衛大臣として働く太壱。
リアルでは午前8時すぎ。拡張現実内も午前8時。
リアルも拡張現実内も、時刻は同じなのだ。
「皆、おはようございます」
部下たち全員があいさつを返してくれた。
「第一艦隊の修繕は今日の朝6時には完了しているはずだが?」
部下の一人、
「はい‼ 既に完了しております」
「報告ありがとう、一梓中佐‼ 今日のポニーテールも可愛いよ‼ 第1次作戦は上手くいっているか?」
今度はもう一人の部下、フランチェスカ少佐が答える。
「はい‼ こちらも完了しております。作戦は成功しました。敵の金星人はこちらには気付いておりません」
「部分的にセクハラ発言がありましたよ、大臣。今後はお控えください‼」
太壱は大臣席に腰掛けながら返答する。
「そうか。ならば第二次作戦を進めよう」
「こちらの話を聴いていますか、大臣?!」
一梓が抗議していると、防衛大臣の斜め下の横のドアが開いた。
丸刈り頭の大柄の男が白衣姿で現れた。
太壱はすぐに気付いた。
「これはこれはポートレフカ大佐。どうなさったのです?」
「あなたに頼みたいことがあってね。是非引き受けていただきたいのだが、先ずは詳しく説明させてほしい。お時間はあるかな?」
太壱はニヤリと笑った。
「勿論、ありますとも」
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