世界がRPG化!?ケンカでレベルアップしたら俺が勇者に!?

大河

第1話「ケンカとレベルアップ!?」

柊ゆうきは、目つきの悪さで損をしてきた。

 特にケンカの場面では――いや、むしろそれ以外の場面でも、だ。


「おい、お前……睨んでんのか?」


 そんな台詞を投げかけられるのは日常茶飯事。本人にその気はなくても、鋭い眼光が相手の挑発スイッチを押してしまうのだ。

 だから、ケンカは数えきれないほど経験した。結果、いやでも腕っぷしは鍛えられた。


 だが、今日の放課後。

 いつもと違う「ケンカ」が始まることを、ゆうきはまだ知らない。



 放課後の駅前。

 不良グループに絡まれた女子生徒を助けようとして、ゆうきはいつものように拳を握った。


「やめろって。女の子泣かすなよ」


「はぁ? なんだテメェ」


 数人の不良に囲まれ、喧嘩が始まる。

 正直、慣れている。殴られても立ち上がり、拳を振るえば相手は怯む。そうやって切り抜けてきた。


 だが――。


【経験値+5】


 唐突に、目の前に「光のウィンドウ」が現れた。

 半透明の文字が、空間に浮かび上がっている。


「……え? なにこれ」


 殴った瞬間、確かに浮かんだのだ。まるでゲームの画面みたいに。

 次の瞬間。


【レベルが1上がりました!】


 さらに表示が弾けるように光る。


「レベル……!? は? 俺、RPGの主人公かよ!」


 思わず叫んだゆうきに、不良たちは「何いってんだコイツ」と怪訝な顔をした。だが、拳を構え直すゆうき自身が驚いていた。

 体が軽い。視界が冴えている。

 力がみなぎる感覚――。


「うおおおっ!」


 一気に殴り込む。いつも以上に動きが冴え、あっという間に不良たちを倒してしまった。


 手首を軽く振って汗を払う。

 またいつもの、退屈な日常。


 ――の、はずだった。


 その瞬間。


『LEVEL UP!』


 頭上に、見たことのないウィンドウが浮かんだ。


「……は?」


 数値。経験値。ステータス。

 まるでゲーム画面のような表示が、空中に煌めいて表示された。


 俺の平凡で退屈な日常は、もう二度と戻らない。

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