第82話 三か国の戦い
アリスタ南部のグーテンベルグ辺境伯領とゴッドランド帝国の戦闘は激化していた。
数日後には、アリスタ王国軍が到着することが予想されるため、ゴッドランド帝国軍の第一師団はその前に辺境伯領を落とすべく攻勢をかけ続けていた。
そしてついにシャングリラ公国に潜入していた諜報員から、公国軍が国境を越えてアリスタ王国のグーテンベルグ辺境伯領に侵攻した、と報告が入った。
おそらくシャングリラ公国軍は、帝国軍の第二師団が援軍としてやってくるという情報を得ていたのだろう。
そうなると辺境伯は、援軍が来るまでの間、やむなく公国との国境守備隊の一部を南に移動させるだろうと踏んでいたのだ。
諸国連合のバーレー、フランの二か国は、アリスタ王国との国境の北部から中部の防衛線を構築し、侵攻したのは南部のシャングリラ公国軍だけだった。
しかしアリスタ王国軍は、諸国連合が南部に侵攻したのは、端緒に過ぎない可能性を捨てきれず、東部全体に軍を分けざるを得なかった。
ヒールランドは早々に中立を宣言したため、西にいたヒールランド国境の守備隊を急いで南下させたが、国土の広いアリスタでは時間がかかり、グーテンベルグ辺境伯軍は領地の南東地域から撤退し、北西に拠点を移さざるを得ない状況に陥った。
これらの情報は中央高地にある砦に引き上げた特殊部隊からの報告だった。
彼らはすでに偽装していた両軍の軍装を解いて、偵察兵として三か国の国境がある中央高地付近の山中に潜んで、戦況を監視する任務に移行していた。
西に侵攻するシャングリラ公国軍は、途中ゴッドランド帝国軍と対峙することとなったが、第二師団の到着がまだだった帝国軍は、公国軍と北方からくるアリスタ王国軍を共同で戦うことを決めた。
そこからは、両軍ともに占領地域を確保することを目的に、北方に防衛線を敷いたのである。
アリスタ王国軍の南西部守備隊が最も早く、辺境伯領の援軍として到着し、そこでゴッドランド第一師団の進軍を留めることに成功し、両軍はそこで今激しい戦闘状態になっている。
執務室には、文字通り飛んで帰ってきたラプラスが専属秘書として、中央高地からの報告をまとめて戦況分析をしていた。
「どうなるかな。これから」
私の問いにラプラスはそうですね、と顎に手をやってしばらく考えた。
「ヒールランドとの国境の守備隊のほとんどが南下しているので、おそらくはゴッドランドの第一師団の侵攻は第二師団が到着するまでは止まるでしょう。あとは東側の北からくるアリスタ王国軍ですが、東部の諸国連合の北中部の砦は無視できない以上、ゴッドランドの第二師団とシャングリラ公国軍の居座っている地域を奪還するのは難しいかと」
「となると、このままでいけば、辺境伯領の東半分は失われることになる可能性は高いということになるな」
ラプラスはそれを聞くと、私を見て悪魔らしい笑顔を浮かべた。
「ヒールランドが裏切れば、すべて失われます」
「それをいうなら辺境伯領どころの話ではないだろう。だが、今はアリスタ王国とゴッドランド帝国の戦力を削った方が良い。ここで我が国が中立すれば、アリスタへの貸しになるし、我が国への警戒心が解かれれば、ラーナーへの行き来も増えるだろう。それにゴッドランドの第二皇子は、どうやら第一師団の指揮官の一人として参加していたらしいから、復権も確実だ。残念ながら辺境伯領にはアンリエッタはいなかったがな」
それにこの戦いに関わった三か国に対して、今後ヒールランドは大きな影響力を行使できると、私は考えていた。
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