浮気したらコンクリート詰め!妻の愛は重すぎる

志乃原七海

第1話:浮気したらオマエんちいくからな!





けたたましい金属音と、地響きのような振動が、平穏な昼下がりを切り裂いた。


田中一郎は、庭で育てているトマトの手入れをしていた。太陽の光を浴びて赤く熟した実を優しく撫でながら、週末の収穫を楽しみにしていた。妻の美咲も喜んでくれるだろう。そう思った瞬間だった。


「なんだ?」


顔を上げた瞬間、一郎の目は信じられない光景を捉えた。轟音を立てながら、巨大なダンプカーがこちらに向かって突進してくるではないか。


土煙を巻き上げ、猛獣のように迫り来るダンプ。その運転席には、憎悪に歪んだ美咲の顔があった。美咲は、ダンプのクラクションをけたたましく鳴らしながら、一郎に向かって叫んでいる。


「浮気したらオマエんちいくからな!」


あの日の美咲の言葉が、一郎の脳裏に鮮明によみがえる。冗談めかして言ったはずの言葉が、まさか現実になるとは。


一郎の心臓は、凍り付いたように動かなくなった。浮気の事実がバレたのか?なぜ、ダンプで?


次の瞬間、ダンプは一郎の家の門を粉砕し、庭に侵入してきた。一郎は恐怖で足がすくみ、その場に立ち尽くすことしかできない。


ダンプは、容赦なく一郎の家へと突っ込んでいく。


その時、美咲の声が聞こえた。


「上だよ!上を見ろ!」


は?


一郎が反射的に空を見上げると、そこには予想もしない光景が広がっていた。


轟音を立て、けたたましいローター音を響かせながら、一台のヘリコプターが急降下してくる。機体には、大きく「美咲不動産」の文字が書かれていた。


ヘリコプターは、一郎の家の真上にホバリングすると、機体下部に備え付けられた巨大なフックから、無数のコンクリートブロックが吊り下げられているのが見えた。


美咲の狂気に満ちた笑い声が、ヘリコプターのスピーカーから響き渡る。


「浮気者のゴミは、コンクリート詰めにされるのがお似合いよ!」


合図と共に、コンクリートブロックが一斉に落下し始めた。家を押し潰し、一郎をめがけて容赦なく降り注ぐ。逃げ場はない。絶望的な光景が、一郎の視界を覆い尽くした。


**(続く)**


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