第5話 門の女を口説いてみた
開門を報せる鐘の音が皇都リリアンに鳴り響く。
俺は皇都の人や荷物の出入りを管理している門の様子を少し離れた所で見ていた。
早朝から多くの人や荷馬車などが検査の順番を待って列を作っている。
列は大きく二つに分かれていた。
ひとつは旅人などの人間の通行を検査するもの。
もうひとつは商人などがたくさんの荷馬車に積んでいる荷物の検査をするためのもの。
特に早朝はリリアンの市場に行こうとする商人関係の荷馬車の列の方が混み合う。
俺は旅人に分類されるので本来なら人間の通行を検査する列に並べばいい。
通行証だって身分証明書だってちゃんと「ハリー・カルド」の名前で作成してあるから問題ない。
問題なのはその検査場の所に仁王立ちをして通行する人間を睨みつけているローゼン将軍だ。
この国では皇帝は人前では薄いベールを被って素顔を見せないのが慣例だから俺が素顔で歩いていても皇帝だと気付く者はいない。
だがローゼン将軍は俺の素顔を知っている僅かな人間の一人。このまま俺が門を通過すれば問答無用で俺を捕まえに来るだろう。
まいったなあ。
あんまりローゼン将軍とは戦いたくないんだよな。
俺の剣術や武術の師匠はローゼン将軍なのだ。
現役の剣士の中でも一流と言われるローゼン将軍から俺は剣術を習った。武術も同じだ。
俺は剣術や武術の才能もあったようで俺の今の腕前はローゼン将軍とは互角だろう。
互角ということは油断すれば負ける可能性もあるということ。
ここでローゼン将軍に負けたら俺が望んだ女とヤリまくる人生が終わってしまう。
なんとかローゼン将軍と対決せずにこの門を突破しなければ。
俺は門の様子をよく観察する。
すると荷馬車の検査をするために並んでいる商人の一行は兵士が行う荷物の検査が終わるまで荷物の説明者以外の従者は別室で待機しているようだ。
検査にはある程度の時間がかかるので待機室が用意されている。
その待機室に入るだけなら何も検査はされないようだ。
しかもこっちにはローゼン将軍はいない。
俺はまず待機室に商人の従者のフリをして入り込んだ。
待機室に入ると従者たちは部屋の中で椅子に座ったり水などを飲みながらおしゃべりをしている。
さすがにリリアンに商売に来る者たちの従者なので人数も多い。
すると何人かの女たちが従者たちの世話をしていた。
水を配ったり体調の悪い者の世話をしているようだ。
よし、これを利用しよう。
「あの、すみません」
俺はお腹を押さえて従者の世話をしている若い女に声をかけた。
「どうしましたか?」
「少しお腹が痛いんでどこか横になれる場所はありませんか?」
「まあ、大変! どうぞこちらの別室に簡易ベッドがあるのでそこにご案内します」
その女は俺の言葉を疑うことなく俺を別室に連れて行ってくれた。
そこには確かに簡易ベッドがあり他の人間の姿はない。
「ここに横になってください」
「ありがとうございます」
「じゃあ、ゆっくり休んでくださいね。また様子を見に来ますから」
「いえ、その必要はないです。お腹が痛いなんて嘘ですから」
「え?」
女はきょとんとした顔になる。
俺はニコリと微笑んで女に近付いた。女は俺に微笑みかけられて僅かに頬を赤く染める。神をも魅了すると言われる俺の美貌で微笑まれれば大抵の女はこんな反応をする。
でも皇帝の時は俺の素顔を見られる女は少なかったが。
俺は女の耳元に口を近づけて甘い声で囁いた。
「ねえ、お姉さん。可愛いね。俺、お姉さんのこと好きになっちゃった。俺とイイことしようよ」
「っ!?」
俺は女が逃げ出さないように抱き締めて口づけをした。
女は僅かに抵抗したがすぐに力が抜ける。
俺は唇を離した。
「あ、あの……」
「お姉さんは旅人の世話するのが仕事でしょ? 俺の体調が悪いの世話してたって後で言えば時間ができるよね?」
「いえ、あの、でも……」
「俺はお姉さんがとても気に入ったんだ。俺のことは気に入らないかな?」
俺は女の瞳を覗き込むようにして満面の笑みを見せる。
俺の美しい笑顔に女の瞳はうっとりとし始めた。
これならイケるな。
「そ、そんなことは……」
「大丈夫。ここでのことは生涯二人だけの秘密ってことでさ」
「ほ、本当に秘密にしてくれますか?」
「もちろん。俺を信じて」
俺は再び女に口づけをしながらベッドの上に押し倒した。
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