第3話 クリディアナの誘いにのってみた


 時間も遅いせいか酒場の中にはそんなにお客はいない。

 俺はカウンターに座る。



「いらっしゃい。何にします?」


「ワインと何かつまめる物を頼む」


「あいよ!」



 店主に注文を済ませると俺は一息ついた。



 初めて自分の意思で女を抱いてみたけどあれは予想以上の興奮だったな。

 外でヤルなんて思いもしなかったし。

 こんないい思いができるならもっと早く皇帝を辞めるべきだったなあ。



 そこへ店主がグラスに入れたワインを出してくれた。

 俺はそのワインを飲む。


 とても皇宮で飲むようなワインの味には及ばないが贅沢を言ってはいけない。

 これからは俺は「平民」として生きなければ。

 まあ、生活費の心配はないが。



「あら、お兄さん。すごいカッコいいじゃない。私と飲みましょうよ」



 俺がワインを飲んでると隣りの席に自分のお酒の入ったグラスを持って女が座った。

 女の髪は金髪で瞳は青い。身体つきが分かるようなピタリと身体に密着するような服を着ている。

 全体的に女にしては背が高くスラリとした印象だ。年齢は20代半ばに見える。



「別にいいですよ。俺はハリーって言いますけど、お姉さんの名前は?」


「私はクリディアナ。長いからディアナでいいわよ」


「分かりました。ディアナですね」


「ハリーは旅の途中なの?」


「ああ、はい。これから旅に出るというか」


「そうなの。じゃあ、リリアンが地元なの?」


「まあ、そうですね。ディアナは?」


「私はホルトレール王国の出身よ」



 俺は自分の頭の中で地図を広げる。

 ホルトレール王国はジルヴァニカ帝国の南に位置していて海に面した国だ。

 ちなみにジルヴァニカ帝国は中央大陸の内陸部に位置していて海はない。



「ホルトレール王国は南の国ですよね。ここより暖かいんですか?」


「暖かいってよりは熱い国よ。だから女も一晩の熱い恋をするのが好きなの。うふふ」



 ディアナは俺に身体を摺り寄せて甘い声で俺の耳元で囁く。



「私はこの酒場の隣りの宿を取ってるの。南の女と熱い一晩を過ごさない?」



 これも女からのお誘いだよね。

 断ったら女性に恥をかかせることになって失礼になるからお誘いを受けよう。



「いいですね。俺も熱い一晩を過ごしたいです」



 ユリアとヤッた後でも俺の性欲は尽きたりしない。まだまだ元気だ。

 俺はニコリとディアナに笑みを浮かべてお誘いを受けることにした。





 俺がディアナと仲良く宿屋に向かう頃、皇宮の皇帝の部屋には深夜にも関わらず三人の男が集まっていた。

 ラッセンド宰相にローゼン将軍、それに俺の弟のセルシオだ。

 三人とも厳しい表情をしてテーブルの上の紙を見ている。



「なんてことだ……陛下が皇帝を辞めて行方不明などと他の国や国民に知れたら一大事だ」



 ラッセンド宰相は蒼ざめた顔で今にも倒れそうだ。

 明日の最終確認のために皇帝の部屋にやって来てハリードルフが残した手紙を発見したのはラッセンド宰相だった。

 そして慌ててローゼン将軍とセルシオに報せたのである。



「落ち着いてください。ラッセンド宰相。まずは明日の陛下の誕生日のお祝いに関しては陛下は急病になられたということでどうでしょうか?」


「おお、そうだな、ローゼン将軍。しばらくは病気療養中にしよう。その間に陛下を見つけ出して皇宮に戻っていただこう」


「そうですよ。兄上は賢帝と呼ばれる方です。きっと何かお考えがあって姿を消されたに違いません」


「そ、そうですな。セルシオ殿下。そうに違いませんな」


「私は兄上が戻るまで兄上の代理として公務をしますのでローゼン将軍は兄上を探してください」


「分かりました。では私は陛下の後を追って必ず陛下を連れ戻して参ります」


「頼むぞ。ローゼン将軍」


 三人の男たちは頷き合った。





 そんな男たちのことなど知らずに俺はディアナと一緒に宿にあるディアナの部屋に入る。


 さて南の女はどんな熱い一晩を俺に体験させてくれるんだろう。

 俺の心は高鳴っていた。

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