EP6(2)

「それでは開始する」

前に座っているのはそれぞれの課長だった。まぁ色んな捜査係の係長、つまり警部が出席している以上、それ以上の警視、警視正が仕切ることになる。

通貨偽造詐欺事件については件の立てこもり犯6名が関わっていたことと口封じで伏見湊警部補を殺して海に遺棄したことを吐き、現在も捜査を進めている。かなり規模の大きな事件のためにまだバックがいるだろう、そして公安側が察知した新たな事件の匂いも関連する。

まぁそれは爆弾物と銃火器の違法取引の匂いだ。

まず通貨偽造による詐欺事件はこうだ。

手口は様々あるがとにかく対象に詐欺行為を働き、少しの金を引っ張り出す。それから手渡しで偽札を渡し、代わりに入金すると言って暗証番号等を聞き出し、別の人物がその金を持っていくがもちろん入金など出来ない。偽札だったから罰金と本物の金に変えてあげるからそのための金がいると言って銀行の金と手元の金全てむしり取るといった内容だ。

それでその立てこもり犯は偽札詐欺犯でもあったみたいだがもちろんまだまだお仲間はいる。その利益と偽札で新たな銃火器と爆発物の購入をする予定だった。6名が捕まったが犯人らも把握していないがおそらくまだ10人ほどいて、取引が行われる予定らしい。我々の仕事はこういった取引ルートも潰していかないとまたあのような組織されてしまう。それで、こんな大事になっているのは近々各国のトップが集まる国際サミットが日本で予定されているからだった。

ここでの大きな取引とあればサミットが狙われるだろう。というわけで公安部と刑事部が協力することになった。

瞠はもちろん春樹もかなり燃えていた。春樹はあからさまに、瞠は冷静沈着だが目はメラメラ燃えていた。友人が殺されたのだ、仕方がない。どうしてもこの事件を解決したい、そんな意志が見えていた。


「おい、聖園」

ひと通りの会議が終わり、皆それぞれの捜査をしに散り散りなる中で春樹は梛に声を掛けた。

「聖園!」

肩を掴まれ、ビクッとして振り返る。

「ど、どうかしました?」

聞こえていなかったようだった。

「来ないのか?一緒に」

瞠は先に車を回しにいった。まぁ公安らしい捜査は基本できないのでそうするしかないのだが。

「すみません、用事があるんです。これからもあまりこの捜査には参加できないかと……唯川さんをよろしくお願いします」

そう言って梛は足早に去っていった。


「それで、なんの用事でしょうか?唯川次長。やっと手錠をかけてくれるのですか?首に縄をかけてくれるのですか?」

警察庁、次長室。重苦しい雰囲気が2人の間を漂っていた。芺威は無言で紙を差し出す。

「厚かましいお願いだ。許せないのはわかる。しかし手伝って、くれないか?告発を。これが終わったら私は自首する。怖いのだ、あの人が」

梛は震える手で紙を握り、そこに書かれた衝撃的な事実を見つめる。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る