彼がいない教室

@haruki0309

第1話

4月7日、私達は高校2年生になった。体育館で始業式が終わった後教室はクラス替えの直後のため皆やや興奮気味で盛り上がってる。そんな教室の様子を感じながらかくいう私も隣の席の女の子と世間話をしてる。

「神崎さん顔くらいね、分かる!校長先生も新しい担任もずっと受験の話ばっかだったよね!新しい担任厳しそーだし」

普通に話してたつもりだったけど内心憂鬱なのが見透かされてしまったのだろうか、もちろん大学受験に危機感がない訳では無く嫌っちゃ嫌だし新しい担任も感じのいい人ではない。

しかし、私の気分を1番落ち込ませているのはそれらではない。

相手が能動的に話して私は受け身で返す、去年の入学式と真逆の構図だ。絶対に忘れない去年の入学式、私は彼にずっと話して彼は今の私のように受け身の姿勢だった。【彼】とは去年同じクラスだった私の親友だ。

でももう彼はこの学校にいない、私のせいでいないのだ。 私の心を曇らせるのはこの事実なのだ。私はこの罪と向き合わなければいけない、そんな学校生活が今日から始まる。


家に帰ると玄関に見覚えのある靴があった、恐らく姉が帰ってきたのだ。あの人はほとんど家に帰ってこないのに珍しい。

「ただいま」言うだけ言ってみた

「おかえりー」久しぶりなのに聞き飽きたような声が返ってくる。

「学校どうだった?」

「まあ普通、」

「そっかー」相変わらず中身のない会話、私達は昔からお互いの会話に中身を付与することができないのだ。

「なんで帰ってきたの?なんも聞かされてないんだけど」

「なんとなくー?」なわけないだろ

きっと何か理由があるんだろうけど言いたくないですって顔に書いてあったのでこれ以上追求せずに昼寝することにした。


その日の夜、奇妙なことに姉は私の部屋に来た。そして相変わらず中身のない話を何時間もした、意味なんてないように見える時間だったけど不思議と悪い気持ちはしなかった。

起きたら姉はもう既に家を出ていた。次帰ってくるのはいつだろう、その頃に私はもう今の姉と同じ年齢になってるかもしれない。

結局何しに来たか分からず、母親に聞いてもぼかされてしまった。この家庭はたまに秘密主義なのだ。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る