第6話

カーテンが閉まると、試着室の中は二人だけの狭い空間になった。狭いとはいえ、河香葉と花仁菜の距離は自然と近くなる。香葉は少し息を詰めながら、ふと目を見上げる。「なんか……試着室って……、距離が近いよね……これってどういうこと?」


花仁菜は軽く肩をすくめて、くすっと笑った。「どういうことって……その、期待してるんですか、私に?」


河香葉は一瞬戸惑い、首をかしげる。「え? いや、期待って……」


花仁菜は少し顔を近づけ、声を低くして、まるで本気で脅すように言った。「いや、期待はしてないけど……S 的な彼女として、あなたは理解してるよね。私が彼女で、あなたの彼女は私なのよね」


河香葉は思わず息を呑む。心臓がドキドキして、試着室の狭さも相まって、なんだか圧迫感を感じる。「え、えっと……わかってる……よ?」


花仁菜はにやりと笑う。「分かってるんだよね……?」その声は低く、真剣さと遊び心が混ざっていて、カーテンの向こうの店員たちがざわざわと動揺しているのに気づかないほどだった。


河香葉は思わず小さく肩をすくめ、目をそらす。「もう……なんなのよ、急に怖い声で言わないでよ……」


花仁菜は満足そうに小さく肩を揺らし、「ふふ、ただ確認したかっただけ」と言った。

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