彼女でいいのかな?

紙の妖精さん

第1話

河香葉は、スマートフォンの画面に釘付けになっていた。

「目を逸らすな。私を理解するまで見続けろ――」

瑞川花仁菜から届いたメールの文字列が、まるで命令のように彼女を縛る。添付された画像には、制服姿と体育水着姿の瑞川が交互に映っていた。添付された画像には、制服姿の瑞川が柔らかい朝の光を浴び、白い襟元が光を反射してキラリと光っていた。次の画像には、体育水着姿の瑞川が、線の細い肩から腕にかけての柔らかな曲線を見せる。河香葉は目をしょぼしょぼさせながらも、画面を3時間以上、まるで囚人のように見続けた。


その間にも、何度か電話がかかってきた。

「どう思った? どう感じた? 言ってみろ」

瑞川の声は、優しくはない。むしろ、徹底的に追い詰めるような響きを帯びていた。


河香葉は、必死に懇願する。

「もう遅いです…明日謝ります。お願いします…!」

しかし瑞川は容赦ない。

「明日、ちゃんと新しい制服に着替えて来るんだよね? 写真は最新のXperiaで撮るんだから。うまく撮れたら、この前の暴言は許してあげる。でも失敗したら…また長時間やり直してもらうからね」


河香葉は息を飲む。画面に映る瑞川の顔は笑っていない。冷たく、そして確信に満ちている。

「分かりました。それで妥協します…」


だが、その命令の裏には、何か魅惑的な、抗えない力があることに河香葉自身も気づいていた。憎いような、でもどこか惹かれる感覚。心の奥底で震える何かに、彼女はまだ名前をつけられなかった。

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