後輩にドヤ顔で“なぜなぜ分析”を語った俺、気づけばゲームの悪役貴族に転生。原因追及で運命を変える ―死亡フラグの再発防止対策書―
工程能力1.33
1章 死のタイムリミット
第1話 工場ではない
工場のラインが止まっていた。
原因不明のトラブルに、作業員たちがざわついている。品質管理部門に配属されて三年目の俺は、腕を組んで新人の後輩を前に立っていた。
「……いいか、トラブルってのはな、全部“なぜなぜ分析”で解決できるんだよ」
俺は得意げに言った。
なぜなぜ分析とは、ある問題とその問題に対する対策に関して、その問題を引き起こした要因(『なぜ』)を提示し、さらにその要因を引き起こした要因(『なぜ』)を提示することを繰り返すことにより、その問題への対策の効果を検証する手段である。
新人は半信半疑でメモを取り、俺は先輩風吹かせながら薄い優越感に浸っていた。
――その時だった。
目の前が、唐突に、暗転した。
視界を埋め尽くす闇。
息を呑む間もなく、身体が重力に引きずり込まれるように沈んでいく。
(な、なんだこれ……!?)
――暗闇。
意識が浮かび上がった瞬間、見たことのない天蓋付きのベッドが視界を占めた。
絹のカーテン、磨き上げられた大理石の床。さっきまでいたはずの工場の殺風景な景色とは、あまりにも違いすぎる。
(ここは……どこだ? 俺は……工場で後輩に……)
混乱する頭を押さえ、ベッドから身を起こす。
その時、扉が静かに開き、一人の女性が入ってきた。
「アレクシス様、ようやくお目覚めになりましたか」
黒色の髪を後ろでまとめ、落ち着いた佇まいのメイド。
派手さはないが、整った顔立ちにドキッとする。年齢は二十代半ばといったところだろうか。
その柔らかな黒色の瞳を見た瞬間、胸の奥が強く脈打った。
「……あなたは、誰だ?」
思わず口をついて出た問い。
彼女は一瞬驚いたように目を瞬かせたが、すぐに穏やかに微笑んだ。
「お熱のせいで、お忘れですか?私でございます、リリア・エヴァンス。八歳の頃から、ずっとお仕えしております」
「リリア……?」
その名を聞いた瞬間、脳裏に鮮やかな映像が流れ込む。
剣と魔法の学園、勇者と仲間たち、そして――悪役として立ちはだかり、無惨に死ぬ公爵家の嫡男、アレクシス・フォン・ヴァーレンシュタイン。
これが転生前の記憶。
そして、いままでアレクシスとして生きてきた記憶も同時に流れ込んできた。
高熱を出したところで、アレクシスとしての記憶は途絶えている。
(まさか……俺はゲームの中に……?そしてこの人は……俺が唯一心を許していたメイド……?)
震える声で、彼はもう一度問いかけた。
「ここは……アルカディア・アカデミアの……世界なのか?」
リリアは答えず、ただ優しく膝をついて彼の額に手を当てた。
その温もりに、前世の記憶と今世の現実が、静かに重なり始めていった。
「お熱も下がったようでございます。ただいま、医者を呼んできます」
そういうと、リリアは部屋を出て行った。
【後書き】
解説が長くなるので本文では極力書きません。用語がわからなければコメント欄で質問していただければ回答します。
それと、本来8Dにそってなぜなぜ分析となりますが、それも長くなるので省略です。
8DでもPDCAでもやるととんでもなく長くなるので。
PDCAって書いちゃうと、会社が絞られちゃうのですが、知識として知っているだけです。仕事で使うのは8Dですね。
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