第2話 スターサーヴィスは宇宙の何でも屋


 スターサーヴィス、それは、宇宙規模の人材派遣会社である。


 派遣の要請があれば、ベビーシッターからコンパニオン、展示会のサクラから傭兵まで、必要なときに必要な能力を持った人員をきっちり揃えることで爆発的な発展を遂げた会社だ。


 純然たる適性と能力主義。完全歩合制の給与体系で成り立っている。


 会社に登録された人員の数は膨大で、その膨大な登録員をスムーズに回転させる組織力と情報力は同業他社の追随を許さない。


 現在、スターサーヴィスは、銀河連合ミルキーコントロールの統治する惑星、衛星、宇宙人工島コロニーなどすべてに支局や出張所を置くほどに成長した。


 ちまたでは、もはやスターサーヴィスを知らない者はいない。


 ピュアが所属する第四課は、本来、ビル管理やイベント警備などの警備業務や、家出人、遺失物の捜索といった、総合警備会社と探偵事務所がいっしょになったような部署だが、サージェントと呼ばれる男がとりしきる「特務」というチームは、とりわけ物騒かつ危険な任務を請け負う。


 いわば、護衛、潜入、情報工作のエキスパートの集団だ。


 構成員は、複雑な経歴を持った一癖も二癖もある連中ばかりで、年齢や外見からは判断できない猛者ぞろいである。


普段はのんびりと学校に通い、昼休みには惰眠をむさぼるのが趣味のピュア・クイッキーは、この春、惑星〈朱雀〉にやって来た。


 移民局に労働パスを貰いに行ったとき、スターサーヴィスを紹介されたのだ。


 というのも、ピュアのパスポートには、銃の携帯許可証ライセンスが添付されていたからだった。


 しかも、民間人の銃器の携行が禁止されている惑星や宇宙ステーション、管理区域のすべてにフリーパスで銃器を持ち込めるという赤い色の証明書レッド・フリーパスだった。


 わずか十六歳の女の子が持つには特殊すぎる、いわくありげな一枚の許可証によって、ピュアはスターサーヴィス特務四課の一員となり、ときどきサージェントに呼び出されては生活費稼ぎのバイトをすることになったのだった。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る