目が覚めたらおっさんだった。そして傍らには小学生の女の子がいた

猫カレーฅ^•ω•^ฅ

第1話:目が覚めたらおっさんだった

「なっ……んだと……」


 ある日、気が付いたらおっさんになってた。朝起きて鏡を見たらおっさんだった。出だしはカフカみたいだったけど、なったのが虫じゃなくてよかった。


 俺は徳留亮一22歳で駆け出しの料理人。やっと玉子料理が少しできるようになったところだ。……いや、だった。


 朝、目が覚めたら知らない家にいた。ボロいアパートで1部屋の……明らかに貧乏な家。家中散らかりまくっている。当然見たことすらない部屋だ。違和感は感じつつ、洗面所で顔を洗い、たった今 鏡の中の自分の姿に気がついたとろこだ。


 はあ……すぐに分かったわ。これは、異世界への転生だわ。いや、異世界に見えないから現実世界転生? 外にはダンジョンとかあるのかな? 攻略の様子をダンジョン内から配信して人気者になるのか!?


 それにしては鏡の前の男は歳を取ってる。多分、30歳? いや、40歳くらいかも。自分の頬をつねったり、ひっぱったりしてみる。


 あー……、肌に水分が足りてないな。年取ったらこんな風になるのか。俺も気をつけないとな。いや、今はこいつが俺か。設定がいい加減だな。作者ってあほだな。きっと。


 問題はいつ戻れるのかってこと。よくあるパターンとしては、何か問題を解決したら元の世界に戻れるってやつ。


 こういうのはイレギュラーだからマニュアルとかもないし、状況説明もない。とりあえず、いってみるか? あれ。


「ステータス、オープン!」


 俺は狭い洗面所で手をぶつけないように控えめに伸ばして言ってみた。


「……」


 何も出なかった。恥ずかし……。せめてもの救いは、誰も見ていなかったこと。


「はぁ……」


 ため息をついたら、ふと視線に気づいた。洗面所のドアが5センチほど開いていて、目だけがこちらを見ていた。それも随分下のほうから。


「うわっ!」

「きゃっ!」


 俺は驚いて思わず声を上げた。すると、むこうも声を上げたようだ。


 恐る恐るドアを開けるとそこには子供がいた。ガリガリに痩せた子。女の子……みたいだ。


「こ、ここの子?」


 気づけば俺は思いっきり怪しいやつだ。


「……」


 女の子は目をそらして部屋の隅に行ってしまった。いやいやいや、設定おかしいだろ。知らないおっさんに知らない子供。もはやホラー。いや、サイコ? 作者は頭がおかしい人なのか!?


「なあ、お母さんは?」


 俺が女の子に話しかけると、彼女はびっくりしたようだった。相変わらず声は出さずに目だけ見開いて驚いたのだった。


 喋れない……とか?


 なんかこうガリガリに痩せた子供を見ると無性に腹一杯にさせたくなる。


 カネは……ないな。改めて部屋の中を見渡したけど、やたら散らかってる。ペットボトル、スーパーのガサガサ袋、弁当のカラ。その中にはブランドのバッグがやたらと転がってる。どんな家なんだよ。


 事情は分からんけど、子供が腹減らしとるのは放置できん。俺はバッグを3つばかしピックアップして出かけることにした。


「なあ、飯食いに行くぞ」

「……」


 あんまり反応はないけど、女の子は座ったまま顔を上げた。ずっと反応がなかったからちょっとでも反応があって嬉しい。


 行くぞ、と言ったものの、女の子の服はくたびれていた。なーんか年季が入ったシャツにスカート。着替えは……ないのか?


 まあいいや。食事が先だ。俺たちはアパートを出た。


 見事にボロアパートで、しかも1階。セキュリティも何もない。玄関を出たらやたら太陽が眩しかった。


初日5話公開です。

応援お願いします。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る