追放された回復術師、実は世界唯一の死霊王でした

兎龍月夜

第1話

冒険者パーティ【白銀の剣】。

 俺――レオンは、その中で唯一の回復役として旅を続けてきた。

攻撃魔法も剣の腕もない。

ただ、仲間を癒すためだけにここにいた。


「お前のせいで俺たちは何度死にかけたと思ってる? 足手まといなんだよ、レオン」


 リーダーの剣士――カイルが吐き捨てる。

 金髪で誰よりも仲間思いの顔をしていたはずの彼の言葉は、容赦なく俺を切り捨てた。


 魔導士のリディアは唇を噛み、目を逸らす。俺と同郷のはずなのに、何も言ってくれない。

 弓使いのエリックは腕を組み、冷ややかに俺を睨む。

 重戦士のブルーノはため息をついただけ。寡黙な彼ですら、今は俺を庇おうとはしない。


「今日限りでお前は追放だ。

 次の町に着いたら別れる」


 その一言で、俺の居場所は完全に消えた。


「待ってくれ! 俺だって必死に――」

「必死? そんな言葉で傷が癒えるか?

 お前の回復は遅すぎる。いない方がマシなんだよ」


 喉が凍りつく。

 仲間と呼べるはずの存在たちから、誰一人として助け舟は出なかった。


 結局、俺はただの足手まとい。そういうことだ。


 その夜、焚き火から離れ、俺は一人で古びた墓地を彷徨っていた。

 胸に残るのは惨めさと悔しさだけ。どこへ行けばいいのかすら、わからなかった。


 ――その時だった。


 胸の奥に渦巻く怒りと絶望が、熱に変わって全身を駆け巡る。

 地面が震え、墓標がひび割れた。


「……な、なんだ……これ……!」


 体を突き破るような力。気づけば俺の手には、禍々しい黒い杖が握られていた。

 同時に、大地を割って白骨の腕が伸び、骸骨兵が這い出してくる。赤い光を宿した眼窩で、俺を主のように見上げていた。


 だが恐怖はない。むしろ、理解できる。

 命令を下せば従う――これは俺自身の力だ。


「……立て。俺の従僕として」


 カタカタと剣を鳴らし、骸骨兵たちは整列する。

 俺は悟った。俺の回復魔法は欠陥なんかじゃなかった。


 死者を癒し、蘇らせるための魔法――それが俺の本当の力だったのだ。


 全身を満たす力が、これまでの無力感を吹き飛ばす。

 仲間に見捨てられた絶望すら、今は燃料に変わっていく。


「……面白ぇ。追放してくれてありがとう、カイル」


 俺は笑った。


 リディアも、エリックも、ブルーノも。

 そして何より、俺を見下し続けたカイル。


 次に会う時は、この死霊王の軍勢を率いて、思い知らせてやる。

 俺が――誰よりも強い存在だということを。


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