46品目 年越しの「たぬきそば」

 本日2学期最終日ということで、メニューは年越しの『たぬきそば』だ。あったかいそばに天かす・ネギ・かまぼこがのっていた。


「明日から冬休みだねー。純ちゃんちは二年参りとかするの?」


 はふはふとおそばをすするさと子が言う。休み中の予定について尋ねていた。


「初詣には家族で行くよ。一応振袖なんかも着てさ」

「へえ~」


 母親がそういうことにはしっかりしているのだ。せっかくの季節の行事なのだから、晴れ着を着用するようにと。


「夏祭りの時も浴衣だったもんね、純ちゃん」

「ああ、そうだったな」


 そこまで話したところで、さと子は「あれ?」と首を傾げた。


「でも純ちゃん、コスプレはもうしないとか言ってなかったっけ?」

「ああいうのはコスプレとは言わんだろ……。普通に風物詩的なものです」


 ああそっかと納得するさと子。夏祭りの時は、自分もよく似合う浴衣を着ていたくせに……。


「コスプレは巫女さんとかだよね。そっちも見てみたい」

「巫女さんはやりませんー」


 いち参拝客として詣でるだけだ。


「あたしもたぶん家族で行くよ? 初詣。そんで武器として破魔矢を買うのだ!」

「男子小学生のように瞳を輝かせるな」


 高校生女子がそれでいいのだろうか。修学旅行で木刀とか買っちゃうタイプか……。


「ところでさ~。なんでこれ『たぬきそば』って言うの? 純ちゃんは知ってる?」


 急に食べ物の話に転換してくるさと子。フリーダムだな相変わらず……。


「知ってる。トッピングが天かすだろ? だから天ぷらの"タネぬき"が変化して、"たぬき"になったんだ」


 タネのない天ぷらそばなので、"たねぬきそば"からの"たぬきそば"。由来には諸説あるらしいが、有名なものはこれだろう。


「詳しいねえー。さすがおそば好き」

「おっ。よく覚えてたな……」


 夏に『ざるそば』食べた時ちょっと言っただけなのに……。さと子ってけっこう私の話とか聞いてくれてるんだな。


「そりゃあもう! 学校一の純ちゃんマニアを自称しておりますよ」

「そんなもん自称せんでいい。学校一もなにもほかにいないだろうし」

「えー? わりと隠れファンとかいるって話ですけどなー」


 冗談。私ではなくさと子がそうっていうんならわかるけどな……。


(ファンクラブとかありそうだよな……)


 かわいいし人気者だし……。信頼も厚くて成績だって優秀だ。


「何かな純ちゃん? 今なんかあたしのこと考えてくれてる?」


 察しがいいな。やっぱり私のことをそれだけよく観察しているということか……。


「別にー。おそば、あったかいうちにいただいちゃおう」

「あい」


 体も心も温まる……。むろんさと子が私のこと見てくれてるからとかでなく、おいしいおそばのおかげでな。







『12月26日 たぬきそば


 初詣で純ちゃんは何をお願いするの?


            純 & さと子』





「そうだなあ……」


 家族のこととか、自分の将来のこととか……。願いたいことはそりゃあ人間だからいっぱいあるけど……。


「……ん? どうかした純ちゃん」


 隣に立つさと子を眺めて思う。一つしか願えないとすれば……大好きな親友とのことを願うかな。


 これからも仲良く一緒にいられますように――って。


「……お年玉。親戚とかからいっぱいもらえますようにって」

「俗物だよね~。まあ資金調達は大事ですな」


 また素直に言えなかった。自分の悪癖にやれやれと内心で呆れつつ、2学期最後の学食を後にした。




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